貧困を救う手立てがあまりに弱い日本の現実 結局、階層間の景色が共有できていない
阿部:そうです。○○税という種類はいろいろなんですけれども、基本的には税金です。
で、日本人は税金を払ってないんですね。国民がどれくらい税金を払っているのかっていういちばん簡単な指標として国民負担率というものがあります。これって、社会保険料と税金の総額の国民所得に対する比率なのですが、さっき話に出たフランスではこれが6割以上なのに対し日本は4割程度で、OECD(経済協力開発機構)34カ国中下から7番目です。
だから何もできないんです、お金が足りないから。そこの壁を崩さないかぎり、絶対何の対策もできない。
日本は先進国になったことがないのかもしれない
鈴木:その界隈の思考について、ちょっと僕、自分の中で勝手に非科学的な結論をつけちゃってるんですけども、聞いていただけますか?
諸外国と比べて日本がなんでこんなに税が安くて社会保障が薄いのかというと、日本って先進国になったことが実はないんじゃないかなと僕は思うんです。敗戦国ですから、帝国主義時代に侵略の歴史を途中で断念しましたよね。それはそれでよかったと思ってはいますが、やっぱりヨーロッパの国々というのは真っ先に産業革命を起こし、帝国主義社会でアジアやアフリカからたくさんの収奪をして、その中で社会基盤を100年ぐらいかけてつくりましたよね。道路も水道も橋も鉄道も、さかのぼれば国外から奪った富で造らせたものと言ってもいい。
でも日本は明治からいきなり近代化して敗戦じゃないですか。敗戦後になって、社会基盤を改めて整えてきました。だから戦後の土建政治のすべてを否定することはできないし、上下水道の整備から交通網や治水砂防整備等々、高度成長の中、自腹で頑張った経緯があるわけじゃないですか。そうしてやってきたけど、国が右肩下がりになるまでに福祉とか住宅政策とか、そういうところにたどり着くことができなかったんじゃないかと、思っているんです。エビデンスはないし、侵略の歴史がなかったなんて言うと、怒っちゃう人もいるでしょうけど。
阿部:少なくとも、あんまり長く侵略してはいなかった。
鈴木:そう、長くはなかった。一瞬で終わっちゃったんで。だから収奪によってつくるものがなかったんじゃないのか、と僕は思ったんです。
阿部:それはあるかもしれませんね。私も歴史学者でもないし、政治学者でもありませんから、そうかもしれないなあというふうにしか言えないですけど、確かなのは、これは前の世代になればなるほどそうです。みんな貧しかったからというのもあるんですけどね。なので、日本人は税金を払うことに慣れてない。それでみんなすごく抵抗があるんでしょうね。消費税が8%か10%かでワーワー言ってるんですから。
鈴木:消費税がらみの話が出ると、絶対に累進課税だとか法人税のほうでなんとかしろって話が出ます。日本の累進課税の累進度、法人税率は、諸外国に比べたらどうなんですか。