ANA「羽田-ウィーン」直行便開設のインパクト 「音楽の都」への定期便は何をもたらすか

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鉄道での移動も便利だ。ウィーンの中心から100キロメートル以内に各国との国境があり、北はチェコ、東はスロバキア、南東はハンガリーとそれぞれ接している。ウィーン近郊を走る近郊電車は、これら3カ国側の領土までに食い込んでいる。

つまりウィーンの近郊区間では、ルートによって所属国の違う列車が入れ替わりやって来る。「EUのヒト・モノの自由な出入りが可能」というルールを生かして、ほかの国からウィーンの都心へと通勤している会社員も多い。

オーストリアと接する国境の「向こう側」には、大きな物流倉庫や自動車メーカーの製造拠点など、低廉な固定費を生かした各種の産業展開がみられる。

中・東欧各都市への渡航が便利に

これがウィーンをハブとした長距離列車の運行状況を見ると、さらに周辺国との交流が盛んなことが良く理解できる。ANAもプレスリリースで「高速鉄道などの地上交通を利用することで、中・東欧各都市への渡航が便利に」と記しているほどだ。

ウィーンから隣国スロバキアのブラチスラバへはわずか1時間。両国の車両を連結した国際列車の体裁で走っている(ウィーン中央駅にて/筆者撮影)

2015年に全面オープンしたウィーン中央駅と旧東側諸国を結ぶルートでいうと、ウィーンの近郊で国境を接する3カ国はもとより、ポーランドやセルビア、クロアチアなどの首都への直行列車が走っているほか、本数は少ないがフランスから来るモスクワ行き列車もウィーンに立ち寄る。

オーストリア国鉄(OBB)は2016年12月、それまでドイツが運営していた夜行列車をまとめて買収し、「ナイトジェット(Nightjet)」の名で新たにブランド化し、ウィーンをハブに旧東側を含む欧州諸国を結んでいる。

編成が固定化された国際高速列車が欧州を席巻する中、ナイトジェットはいまだに客車の離合を繰り返しながら各国を深夜、ゆっくり走っている( 日本人が知らない欧州「寝台列車」の超絶進化)。

ANAウィーン便の出発時刻はお昼前の11時50分なので、ナイトジェットでウィーン中央駅に着いてそのまま空港に向かえば、搭乗手続きにかかる時間を入れても時間的に間に合う設定となっている。これを利用すると飛行機が通っていないような地方都市に出掛けても、日本への帰りの足が確保されていると考えてよさそうだ。

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