ANA「羽田-ウィーン」直行便開設のインパクト 「音楽の都」への定期便は何をもたらすか

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ANAのプレスリリースを読むと「ウィーンは中・東欧へのゲートウェイ」「欧州域内68都市へのスムーズなアクセスが可能」とある。日本から見るとウィーンは、ロンドンやパリ、フランクフルトなど日本人の渡航需要が多い都市よりも東側にあるので、乗り継ぎ地として使うにも遠回りにならず好適だ。

しかも、深夜便(1時55分発)なので、6~9時間ある時差を利用するとほぼ「寝ている時間を使って目的地に行ける」という利便性は大きい。実際にウィーン到着が朝6時というダイヤが組まれたので、順調に乗り継げれば欧州のあらゆる都市に日本発当日の午前中に着けるわけだ。

特にこれまで行きにくかった中東欧各都市への訪問は楽になる。日本人の観光需要でいうと、この便を使って飛ぶと便利になる中東欧圏内の目的地は、クロアチアにあるアドリア海に面した街・ドブロブニク、チェコの首都・プラハ辺りだろうか。

ウィーンと欧州内各地との接続は、ANAと共同事業を行っているオーストリア航空ほかルフトハンザグループ各社の便を利用する(画像:ANAのプレスリリースより)

どちらもユネスコの世界遺産に登録されており、日本からのツアーも多数出ているが、日本からのフライトがいま一つ不便だったことから、近隣諸国とを組み合わせたバスで周遊するプランの一部に組み入れられていることが多い。ウィーン便就航で時間的距離が短くなるので、これらの街への1都市滞在旅行を目指す旅行者が今後増えるかもしれない。

日本と中東欧各国との交流拡大に寄与も?

欧州連合(EU)は2004年、かつて「冷戦の壁の向こう」にあったポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニアを加盟国として迎えたのだが、残念ながら日本との経済交流は欧州の西側各国と比べると控えめだ。これらの国々の経済規模が比較的小さめという事情はあるにせよ、欧米諸国が積極的に市場開拓や製造拠点開設に出ている状況と比べると日本のプレゼンスは大きくないように思える。

ANAの乗り入れが決まったウィーン国際空港。中東欧や中近東とを結ぶ便が3割を占める(筆者撮影)

そうした中、日本はEUとの間で経済連携協定(EPA)を締結、2019年春の発効を目指している。日本のマスコミはこのEPA締結をめぐり、「一般消費者にとって、チーズやワイン、欧州ブランドが安くなる」といった見込みを語る論評が多かったように思うが、実際には日本企業のEU諸国進出が容易になるというインパクトのほうが大きいだろう。

「旧東側諸国」は経済力が大きくない分、人件費や不動産などの固定費部分が低く抑えられるのが企業には魅力的、と見るべきだろう。日本には「直行便のない場所には行きにくい」という先入観を持つビジネスマンが多い中、中東欧諸国の国境に間近に面するウィーンに直接行ける便の誕生は「新たな企業活動展開への後押し」にもなるかもしれない。

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