ソニーが「ノイズキャンセル」で狙う音響復活 20年ぶりにオーディオ機器事業が増収

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再奮起させるために高木氏が打ち出したのが、CDを超える「ハイレゾリューション音源」(ハイレゾ)市場の開拓だった。「2013年に初めて商品化して、ハイレゾはソニーが牽引するんだ、と意識づけた。これまで抑制していた予算も、旗艦モデル開発のために潤沢に出した」(高木氏)。サウンドマスターと呼ばれる、“音のソムリエ”のような役割を担うエンジニアも配置し、ソニーらしい音を作ることにこだわった。

ノイズキャンセリングヘッドホン「1000X」シリーズの商品企画を担当した、ソニービデオ&サウンドプロダクツの足利祐二統括部長(右)と、大庭寛氏(左)(撮影:今井康一)

さらに量販店の棚作りにおいても、「ソニーはここ数年、ヘッドホン売り場に相当額のリベート(販売奨励金)を支払い、一等地の広い売り場を展開できるようになった」(都内の家電量販店店員)。商品企画の足利祐二氏は「高木氏は当時、常に『上を見ろ』と言っていた」と振り返る。

その結果、2017年度のオーディオ機器の売上高は推定約2700億円と前年比で3割伸びた。高価格帯の売れ行きがよいため、採算も改善しているという。

ソニーは本当に復活できるか

ソニーの社名が英語の「SONIC」に由来するように、音声機器は創業期のソニーを国際ブランドに押しあげた同社のDNAともいえる事業だ。さらに今年5月には英音楽出版社・EMIミュージックパブリッシングの買収を発表するなど、音楽コンテンツの保有に攻勢をかけるソニーにとって、その“出口”となるハードウェアに人気モデルがあることは重要だ。

1979年にソニーが初代ウォークマンを発売したときのように誰もが買い求めるようなヒットを再び作るのは難しいうえ、同じものが大量に売れる時代でもない。ただ、オーディオ機器からの久々のヒット登場は、ソニーの復活を裏付ける1つの証拠だといえる。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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