デジタル社会で生き残る銀行の条件とは何か HSBCの統括責任者ルイス・サン氏に聞く

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ほかにも、たとえばケータリングビジネスが著しく進化を遂げています。かつて自分で食事を作らないのなら、面倒だけどちょっとおしゃれして、外へ食べに出掛けるのが普通でした。しかし、今は好みのレストランからでも、スマートフォンで簡単に出前を取れるようになりました。

このように、デジタルエコノミーの進化に伴って、私たちのライフスタイルは大きく変化しています。しかも、デジタルエコノミーのビジネス規模は拡大の一途をたどっており、中国では、オンラインサービスの事業規模が、2兆ドルにも達しています。これは全世界で行われているオンラインサービスの40%を占めています。

デジタルエコノミーの市場規模を拡大させるためには、「3つの流れ」を確保しなければなりません。それは情報の流れ、マネーの流れ、モノの流れです。

まず、情報の流れとは、一般消費者に対して有益な情報を無料で提供することです。またマネーの流れは、買い物をした後、オンラインを通じてシームレスに決済できる環境を構築することです。そして最後のモノの流れでは、物流ネットワークが強固かどうか、が問われます。たとえば11時にケータリングでランチを注文した後、12時に注文したとおりのものが届くのは、強固なロジスティクスのネットワークがあるからです。

金融はテクノロジーの進化で劇的に変わる

世界最大のオンラインサービス大国となった中国は今、技術革新を加速させるため、規制当局が頭ごなしにダメ出しをすることはしません。まずはやってもらう姿勢が明らかです。良いアイデアを、規制でがんじがらめにして潰さないようにしているのです。

加えて、中国には今、非常に強固な資本市場があり、スタートアップ企業がベンチャーキャピタルから十分な出資を受けられる環境が整っています。

こうした外部環境の整備によって、デジタルエコノミー時代を支える、さまざまなテクノロジーが世の中にリリースされ、それがさらにデジタルエコノミー化を加速させる、という好循環に入っているのです。

こうした流れは金融業界にとっても例外ではありません。金融とテクノロジーの融合により、デジタルエコノミー社会を支える、新しい金融サービスが登場してきています。デジタル決済は、もはや当たり前です。11月11日の「独身の日」に、ブラックフライデーと称した大規模なセールが行われますが、昨年は1日で220億ドルものデジタル決済が行われました。中国のマクドナルドは、クリックひとつで買い物できます。もちろんキャッシュレスです。

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