新幹線「子連れ専用車両」はなぜ生まれたのか 年末帰省「騒ぐと周りに迷惑が…」の心配無用
帰省ラッシュの季節、電車の中で子どもたちが騒ぎ出すと、周囲に迷惑をかけてしまう。そこでやむをえず、渋滞の中をマイカー移動。実家にたどり着いたときには、お父さんもお母さんもヘロヘロ。孫の顔は見せたいけど、移動の苦労を考えるだけでテンションが下がる実家への帰省の負担が、ファミリー車両を活用するだけで大幅に緩和されるのだ。
しかも料金は、この年末年始に運行される列車で、東京―新大阪に乗車した場合、おとな1万3500〜1万4400円(正規料金1万4450〜1万4650円)、こども6000〜6500円(正規料金7220〜7320円)と、正規料金より割安。1家族に「プラス1席」、荷物を置くためのスペースが割り当てられるので、大きな荷物やベビーカーがあっても安心だ。
移動時間を睡眠時間に充てたいような人にとっても、子ども連れの人に専用車両に乗ってもらえば、車内が静かになるので、「ファミリー車両」は多くの利用者にとってメリットがある。
にもかかわらず、一般的に浸透している感じがしない。実際、筆者が親子で帰省を検討している人に、この話題をすると、みな「知らなかった」と答えた。
きっかけは若手車掌の声
そこで、「ファミリー車両」の企画担当、JR東海営業本部観光開発グループの河田大毅氏にインタビュー。この車両がいつ誕生したのかといった歴史や、現在の利用状況を聞いてみた。
――「ファミリー車両」の誕生のきっかけは?
「2009年頃、若手社員が集まって、新企画を考えるプロジェクトが立ち上がりました。その会議で車掌から『小さなお子様と乗車されている方が、お子様が泣いたり騒いだりするたびに、周囲の方に謝りながらデッキに行くなどして、肩身の狭い思いをされている』との意見が出ました。そこで、気遣いなく乗車できるような専用車両ができないかという話になり、2010年に『ファミリー列車』の運行を始めました」
――当時は「ファミリー『車両』」ではなかった?
「運行を始めた2010年の夏休みは、貸切列車を2日間で上下計4本運転するという形でした。この運行が好評だったのと、貸切列車よりも、16両編成のうちの1両を『ファミリー車両』にした『のぞみ号』をたくさん運転した方が、お客様にとっても列車の選択の幅が増えますので、2010年の年末より、現在のような形となりました」
――利用状況はどうなのか?
「具体的な数字で言いますと、現在の『ファミリー車両』の形となった2年目(2011年)は、運行日数が47日で運転本数が94本、お客様の数は約3850人でした。今年の夏休み期間は、運行日数52日、運転本数190本、お客様は約8500人、乗車率はシーズン全体でおよそ7割となっています。
現在では、列車によっては発売後、すぐに完売するものもあり、ご利用されるお客様は年々増えております。そこで、昨年(2017年)より、ゴールデンウイーク期間にも『ファミリー車両』の運行を始めました」
【10月25日11時00分追記】初出時、『ファミリー車両』の運行開始時期に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら