通勤ライナーとマンション価格の微妙な関係 「停車の有無」はどこまで反映されているのか
通勤ライナーは特急や急行よりもさらに停車駅が少ない場合がある。たとえば、京急ウィング号やJR東日本の「湘南ライナー」は川崎、横浜という利用者が多い駅ですら通過する。小田急ホームウェイ号のように新百合ヶ丘を通過して町田に停車する列車、逆に新百合ヶ丘に停車して町田を通過する列車など、列車ごとに停車駅を変えているものもある。
その結果、比較的都心に近い駅は通過となり、停車駅が減った分だけ郊外と都心との所要時間が短くなるというメリットがもたらされた。たとえば、京王ライナー利用時の新宿―府中間の所要時間は、準特急を使った新宿―調布の所要時間とさほど変わらない。同様に京王ライナー利用時の新宿―京王八王子間の所要時間も準特急利用時の新宿―高幡不動間の所要時間とさほど変わらない。
府中の物件価格は調布と、京王八王子の物件価格は高幡不動と、接近していてもよさそうだが、実際はどうだろうか。東京カンテイが発表した首都圏における中古マンション物件(築10年程度、70㎡換算)の流通価格によれば、調布4391万円、府中4146万円、高幡不動2782万円、京王八王子2431万円という結果となった。
通勤ライナーは朝の時間帯がネック
通勤ライナーによる利便性は、駅ごとのマンション価格には反映されていないようだ。「現実問題として、通勤ライナーによる通勤を前提に郊外のマンションを選ぶという動きはほとんど見られない」(井出氏)ということなのだろう。
ネックとなっているのは朝の時間帯の運行本数が少ないことだ。朝のラッシュ時はたくさんの列車が走っており、過密状態。そこへ停車駅の少ない通勤ライナーを入れるのは、鉄道会社にとって至難の業だ。京急ウィング号とTJライナーを例にとれば、平日下りはウィング号が11本、TJライナーが13本設定されているのに対し、平日上りは両者とも2本にとどまる。京王ライナーや拝島ライナーは朝の上り列車自体が設定されていない。
現在は帰宅時に人気を集める通勤ライナーだが、朝の通勤時にも乗れるようにならないと、通勤ライナーがマンション価格に影響を与えるという状況にはならないだろう。
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