日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない

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ところで「教育レベル」に関しては、とても納得させられたエピソードが登場する。この点について、まず重要なのは「情報源」だ。特に若い人や子どもの間では、いまやネットで得る情報は動画が中心。したがって、ネット動画の世界で日本がどのように扱われているかを見ることで、日本のイメージを知ることができるというのだ。

海外からなめられている日本

注目すべきは、ネット動画の世界に、日本人をあざ笑うような多くの外国人が存在するという事実。そして、その代表格として取り上げられているのが、2018年初頭に「青木ヶ原樹海の遺体動画」事件を巻き起こしたローガン・ポール氏だ。

ご存じのとおり、さまざまないたずら動画を投稿して莫大な再生回数をたたき出し、決して少なくない収入を得ているアメリカのユーチューバーである。子どもたちの間では大人気であるものの、やることがあまりにも過激かつ下品なので、子どもに悪影響を与えるのではないかと困り果てている親も少なくないという。

そんな彼にとって、格好のターゲットは日本だ。だから、来日時には渋谷や築地など各所で非常識かつ下品ないたずらをし、それらを動画としてアップしたわけである。

彼の動画を見ると、「あまり教育レベルが高くない外国人」が日本に対してどんな感情を抱いているのかがよくわかると著者は指摘する。

ローガン・ポール氏はオハイオ州出身のいわゆる“田舎者”で、教育水準が決して高いとはいえないごくごく一般的なアメリカ人といっていいでしょう。そういった人たちに、日本人だけではなく東洋人全般は、「体が小さくてクレームをつけない、ちょっと奇妙な人種」だと認識されているのです。(中略)東洋人はそういったイメージを持たれていますから、あまり教育程度が高くないアメリカのマジョリティにとっては甘くみられてしまいがちです。
だからローガン・ポール氏たちはアメリカやヨーロッパでなら絶対にしないようないたずらを日本ではたらき、亡くなった人の遺体をビデオで撮影するようなことができてしまう。こうして我ら日本人を困らせたり怒らせたりして楽しんでいる。自分たちと同じ人間とは思っていないからこその暴挙でしょう。(74〜75ページより)

誤解すべきではないのは、著者が決して、すべてのアメリカ人(もしくは外人)がそうだと言っているわけではないということだ。重要なのは、「あまり教育水準が高くないマジョリティ」という点である。

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しかしいずれにしても、彼らが日本人を誤解していることは事実であり、だからこそ「日本すごい!」と手放しで喜んでいられるようなことではないということだ。

ただし個人的には、そのことをきちんと認識することができれば、それだけで本書の役割は完結するようにも思えた。

上記のようなことを踏まえたうえで、以後は「バカにされない日本人になるための方法」として、さまざまな主張がなされている。「本質を見よ」「所属先にこだわるな」「他人と自分は違うと心得よ」「自信を持って行動しよう」「感性を磨け」といった具合だ。

つまり冒頭で触れた「ここが変だよ! 日本人」と同じ視点に立ち戻っているわけだが、ここで展開される「~せよ」というようなメッセージは、むしろわれわれ一人ひとりが、自分自身で考えていくべきことではないかと考えるのだ。

そういう意味では、「現実」をフラットな視点で客観的に見つめた第2章にこそ、本書の意義がある。ほかの章がだめだと言いたいわけではなく、第2章に書かれていることを読者が真摯に受け止め、「日本人はどう進むべきか」を自分の視点で考えてみることこそが大切だと感じるのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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