「荒川区」が地価上昇率の上位を独占した意味 都内769地点の基準地価を改めて集計

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目立つのが荒川区の躍進だ。上昇率の上位3位を同区が占めた。

中でも西日暮里駅前は前年比約10%の高い伸びとなった。幹線道路沿いで電柱地中化が完了し、駅周辺の再開発も進む。さらに約70年前に計画された幅20㍍の優先道路の整備案も再浮上した。国土交通省は、「上野東京ライン開通など都心方面へのアクセスのよさから住宅地としての選好が高まっている」と分析する。

上昇率1位という実感はない

だが、西日暮里駅前で創業50年を迎える不動産業、谷中商事の赤澤誠彦社長は「(上昇率1位という)実感はない」と首をかしげる。住宅地として人気が出てきたのは、「この1~2年に始まったことじゃない」(同)。

7位に入った三ノ輪周辺などは、訪日観光客の民泊需要が目に見えて増えている。ただ、それも2002年のサッカーワールドカップ以降の動きという。

2018年都内の上昇率の上位30地点のうち7割以上が城北地区に集中している。逆に城南地区は11位の大崎1地点のみと、明らかな偏りが見られるのだ。

今回の地価上昇局面の初期から高騰してきた都心3区(千代田、中央、港)は30位内に含まれてもいない。ほかにも住みたい街ランキングなどでトップ常連の街が最初に顔を出すのは恵比寿で94位、吉祥寺は199位。つまり、こうした“有名どころ”は上昇余地が乏しくなっている。

「荒川区の地価はジェット機の後輪と同じ。離陸するとき地面から離れるのは最後で、降下するときは真っ先に下がる」。東京・町屋駅近くで不動産業を営む小林商事の小林清三郎社長は、荒川区の地価についてこう説明する。

1980年代のバブルのときも、2006年から発生したミニバブルのときも、荒川区の地価が大幅上昇した直後に全国の地価が下落し始めた。うたげの終演が近づいているのか。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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