パイロットが足りない!急成長「LCC」の難題 引き抜き合戦に限界、ピーチは自社養成開始

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かつてJALで機長を務めた航空経営研究所の風間秀樹・主席研究員は、「LCCなどの新興勢は、(利益を出すために)いかに非稼働人員を減らすかが重要。JALやANAのように余裕のある体制にするのは難しい」と指摘する。

各社は外国人の活用も進めたい方針だが、「アジアの端にあるLCCで小型機を運航したいと思う人は多くない」(日系LCC幹部)。数千万円単位の高年収で知られる中国や台湾、中東などの航空会社に待遇で勝ることも難しい。

JAL傘下の新LCCが採用に前のめり

そして今、LCCの“新顔”がパイロット採用に前のめりだ。JALが2020年に就航する中長距離LCC子会社、ティー・ビー・エルは、10月9日に募集要項を公表する。ボーイング「787」型機2機の運航に必要なパイロット30人を募る。JAL本体がこれまで募集対象にしてこなかった破綻時の整理解雇対象者からも受け付ける。「海外の航空会社に移った日本人パイロットなどにぜひ来てもらいたい」(西田真吾社長)。

LCCの大半はエアバス「A320」やボーイング「737」などの小型機。パイロットの多くは大型機で長距離路線を飛ぶのが目標だ。B787を飛ばすティー・ビー・エルはこの点で優位に立つ。「破綻でJALを去った若手パイロットを中心に積極的に声をかけているようだ」と、LCC各社は警戒する。

政府は訪日外国人数の目標として2020年に4000万人、2030年に6000万人を掲げる。達成にはパイロットの年間採用数を現状の280人から、2020年に380人、2030年に430人程度まで引き上げなければならない。ピーチの自社養成は小さな一歩だ。

今年度からは航空大学校の定員が年72人から108人に拡大し、民間養成機関の学生向けに無利子貸与型奨学金も始まった。LCCの著しい成長に水を差さないためにも、航空会社や国にはさまざまな施策が求められる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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