パイロットが足りない!急成長「LCC」の難題 引き抜き合戦に限界、ピーチは自社養成開始

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そこで採用したのが、訓練費用の一部を訓練生が負担するスキームだ。養成課程の前半にニュージーランドと英国で1年8カ月かけて行う訓練の費用、約1300万円を負担してもらう。

ピーチ・アビエーションが開催した自社養成説明会は、参加者から活発に質問が飛んだ

ただこの間、ピーチは訓練生に対し、大卒初任給程度の手当を毎月支給(総額は約550万円)。さらに今回提携した三井住友銀行が低利ローンを用意する。ピーチが保証人となり、訓練を終了できない場合、訓練生本人は返済義務を負わなくて済む体系にしている。

海外訓練を終えると、日本国内で有効な免許を取得するため、国内の航空学校での訓練に移る。この訓練はピーチが全費用を持つ。

「自社では育てないと言っていたのに」。複数のLCC関係者が驚いたのは、ジェットスター・ジャパンが昨年7月に始めた免許保持者向けの副操縦士育成プログラムだ。今夏、第1期生4人が副操縦士に昇格した。

ジェットスター・ジャパンが養成した副操縦士第1期生たち。4人とも大学などで免許を取得し、入社した

同社の原克哉・運航乗務員採用審査部長は、「これまでは経験者採用が中心だったが、従来に比べて人材の流動性が低くなってきた」と将来的なパイロット不足に懸念を示す。一からの自社養成の可能性も「ゼロではない」(原氏)。

LCC機長の高齢化が進む理由

日系LCC5社では、パイロットの高齢化が著しい。特に機長は60代が3割弱を占める。乗務年齢は現在68歳が上限で、あと数年で退職となってしまう。

日本で2012年以降に就航が相次いだLCCで機長を務めたのが、JAL出身のベテランパイロットたちだ。2010年に経営破綻したJALからは希望退職や整理解雇でパイロット100人以上が流出し、LCCが受け皿となった。60代の機長が多い理由はここにある。

とはいえJAL出身者だけでは心もとない。実際2014年には、病気やケガで乗務不能の機長数が想定を超え、ピーチは2000便超を計画減便。他社も100便以上の減便を迫られた。昨年11月には、北海道拠点の新興航空会社エア・ドゥが、機長2人の退職で数十便規模の運休を余儀なくされた。

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