高齢者中毒死事件に潜む「医療現場」の盲点 逮捕の元看護師はなぜ現場がつらかったのか

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高齢者中毒死事件は、高齢社会に対応する医療現場の問題を提起している。写真は、本文とは関係ありません(写真:M・O/PIXTA)  

施設で毎日世話をしていた患者が亡くなると、スタッフたちは悲しみと喪失感に包まれる。中には、その死やつらさをいつまでも引きずってしまい、気分が落ち込んでなかなか元気になれなかったり、仕事に身が入らなくなったりするスタッフもいる。

それが、しのぶ会で故人の家族たちと会い、一緒に思い出話をしながら泣き笑いすることで、気持ちが慰められる。故人への思いをお互いに共有しながら、遺族とスタッフそれぞれの心が癒やされていくというのだ。

これなどは初めから意図したものではないにしても、看取りを担うスタッフの気持ちに寄り添うグリーフケアの良い例だろう。

スタッフのフォローとケアが不可欠

2018年診療報酬・介護報酬の同時改定で看取りに関する加算が拡充され、超高齢多死社会の中での需要の増大もあり、今後、在宅も含め、看取りを担う施設・医療機関は増えていくと思われる。そのような現場では、医療・介護スタッフたちの気持ちをきちんと受け止め、対応することが不可欠だ。

医師を中心とした、チームによるフォロー体制の整備はもちろん、死に対する思いや死生観は人それぞれ異なるため、場合によっては個別に適切なケアを行うことも必要だろう。また、スタッフ同士が死というものや互いの死生観について話し合っておくなど、死に対する基本的な教育も欠かせない。

スタッフたちの気持ちがしっかりとフォロー、ケアされ、無理のない穏やかな心で、終末期を迎えた一人ひとりの患者に向き合うことができてこそ、患者や家族にとってのより良い看取り、より納得できる死につながっていくのではないだろうか。

梶 葉子 医療ジャーナリスト

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かじ ようこ / Yoko Kaji

成蹊大学文学部日本文学科卒。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。システムエンジニアを経てテクニカルライターとして独立。その後、医療・医学分野にフィールドを移し、2002年ごろから医師・医療機関への取材・インタビューを中心に執筆活動を続ける。

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