日本の直接投資残高は増加を続けていて2012年末で89.8兆円にも達しており、再投資収益は拡大している。2008年に起きたリーマン・ショックによる世界経済の悪化で、2009、2010年の再投資収益は大きく落ち込んだが、その後かなりの回復を見せ、2012年は2.1兆円の受け取り、1.9兆円の黒字となっている。
2012年の日本の経常収支黒字は4.8兆円だから、再投資収益の黒字はその半分近くに当たる規模だ。自動的に流出してしまう再投資収益を差し引くと、財政赤字を賄う資金の余力は、統計に表れる経常収支の黒字よりもかなり少ないことがわかる。
「経常収支が黒字のうちは大丈夫」という考えは危険
日本の経常収支の黒字は東日本大震災後の原子力発電停止の影響もあって大きく減少しているが、高齢化が進むことで黒字の縮小傾向が続き、いずれ赤字化する可能性が高い。さらに本稿で述べたように、経常収支が赤字になるかなり前から大幅な財政赤字のファイナンスに海外からの資金流入が必要になる可能性が高い。財政赤字を大幅に縮小するために我々に残された時間的余裕は、一般に考えられているよりもはるかに少ない。
経常収支が黒字の間は国内の資金で財政赤字が賄われているので財政赤字が大きくても問題が起きない、と楽観することは危険ではないか。いつの間にか危険水準を超えており、気が付いたときには大変な事態になっているという恐れが大きいのだ。
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