日本の財政、残された時間的余裕は少ない 「経常黒字だから大丈夫」は危険

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日本の経常収支は1980年代初めから黒字が続いている。「国内貯蓄と国内投資の差は、海外部門の貯蓄と投資の差の赤字(反数)であり、日本の経常収支に等しい」という関係があるから、経常黒字であることは国内の民間の貯蓄が財政赤字や国内投資を賄って余りあることを意味している。

日本の財政赤字が問題になり始めたのはそれほど最近のことではない。第2次世界大戦中の財政赤字によるハイパーインフレーションを経験した我が国は、終戦後は初期の混乱期を除き1970年代初めまでは概ね均衡財政を維持していた。しかし第1次石油危機をきっかけに財政赤字が続くようになり、1980年代初めには既に財政再建が大きな政治的課題となっていた。

バブル崩壊後政府部門の赤字が拡大

1980年代後半から90年代初めにかけての時期は、高齢化がまだ初期段階で年金などの社会保障制度の貯蓄・投資バランスの黒字が続いていたことに加えてバブル景気で税収が大きく伸びた。このため政府部門全体としても貯蓄・投資バランスが一時黒字化した。しかし、バブル崩壊と同時に政府部門は貯蓄・投資バランスが赤字化し、その後ほぼ一貫して大幅な赤字が続いている。

1990年代末までの日本では、家計の貯蓄・投資バランスの黒字が大幅で、それが財政赤字を賄う資金源となっていた。同時に、これは国内の需要の不足や大幅な経常収支黒字による円高の原因ともなってきた。しかし、1980年代初めに20%近くもあった家計の貯蓄率が近年は2%程度にまで低下していていることは本欄の「高齢化はデフレではなくインフレを招く」でも述べた通りだ。

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