大林剛郎 大林組会長

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大林剛郎 大林組会長

またしても談合事件で逮捕者を出した大林組。創業家出身の大林会長は引責辞任を表明したが、取締役として会社に残るという。会見では記者団から厳しい質問が相次いだ。(『週刊東洋経済』6月16日号より)

 危機感が足りなかった 人心一新で信用を回復する

1:名古屋市の地下鉄談合事件などこれまでも重大な不祥事があった。なぜ今回のタイミングで辞任を決意したのか。

 名古屋市の事件が発覚した時点では、従来の経営陣でコンプライアンスの徹底を図り、問題を克服していくのがいちばんであると判断した。しかし、今回の大阪府枚方市談合事件は当時の常務執行役員が逮捕された。(現場担当者が逮捕された)これまでとは違う。この事実を重く受け止め、信用を回復していくためには、私や脇村典夫社長も含めて辞任し、人心一新を図るのがベストと決断した。

2:会長退任後も取締役として会社に残る。これでは「人心一新」の意図をまっとうできないのでは?

 (相次いで談合事件での摘発を受けた)私の監督責任は非常に重い。とはいえ、大林家は創業家として、これまでも幾多の困難な時期を社員と乗り越えてきた。今後も創業家や株主という立場で、大林組の再生に力を注ぎたい。大幅な人事刷新によって大半の役員が去る中で、残った者たちで力を合わせ、株主様とお客様の信頼を取り戻したいと思う。

3:大林組は創業家による実質支配が続いてきた。それが経営に負の影響を与えてきたのではないか。

 社内には(創業一族の下での)家族的な雰囲気という長所があったが、社会環境が変われば従来の長所が負に働くこともありうる。いかに負の部分を減らしてプラスを増やすかが大切だ。私のほうから積極的に働きかけることで、都合の悪い情報が上がらないといった弊害のないようにしていかねばならない。

4:これまでの談合再発防止の取り組みで、足りなかったものは何か。

 私を含めて社員に危機感が足りなかった。バブル崩壊後、ほかの大手建設会社では、多額の有利子負債を負うなど経営再建に苦しむところも多かったが、当社は財務面で大きなダメージを負わなかった。そのため、「大林組はつぶれることがない」と思ってきた。が、現在の状況は、バブル崩壊後より危機的だ。これまでに準備してきた法令順守の考え方をどう強化するか。白石達新社長らとともに社内での場づくりをやっていきたい。

5:業界そのものが、長年談合を許容してきた。今後、この悪弊は本当になくなるのか。

 建設業界に(談合を許容する)古い体質があったことはいなめない。それではいけないと、業界を挙げて体質改善に力を合わせて取り組んできた。当社を含め、少なくとも最大手5社の間では(談合規制を強化した改正独占禁止法が施行された)昨年から談合行為はいっさい行われていないと信じている。

(書き手:鈴木謙太朗)

おおばやし・たけお
1954年生まれ。77年慶応義塾大学卒。米スタンフォード大大学院で建設会社経営などを学ぶ。97年に副会長、2003年代表取締役会長に就任。05年からCEOを兼務。

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