26歳で3度もスベった起業家が諦めないワケ 起業家に必要なのはアイデアか姿勢か

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そこで彼は、同じような考えを持つ起業家たちなら彼が興味を持ったブログ記事などを読むために翻訳費用を喜んでシェアするだろうと、考えた。そこからこの新しい事業のプレゼン資料を「わずか1時間で作った」とアイドリンは振り返る。

当初、ペラペラには、小林氏を含む8人の起業家が立ち上げたシードファンド、トーキョー・ファウンダーズ・ファンド(TFF)に登録している2人のエンジェル投資家が、「これは自分たち自身が抱えている課題を解決してくれる」と出資してくれた。アイドリンはペラペラの評価額を、日本のほかのスタートアップよりはるかに高い3.4億円に設定した。

なんとグーグルがライバルになった

それから、アイドリンは次々と投資家を巻き込み、短期間のうちに300万円、600万円、1000万円、1200万円、1500万円と調達額を増やしていった。新しい投資が決まるたびに、資金調達の勢いも増した。

アイドリンはサンフランシスコに飛び、技術畑の共同創業者をつかまえると一緒に東京に舞い戻ってペラペラの開発を開始。気が付けば、日本の投資家から4000万円もの資金を調達していた。その一方で、彼と共同創業者はペットビジネスでも儲けられると考えたペラペラの投資家の1人にキュッツィーを売却した(ちなみに、売却額は少額だったが、ペラペラの事業の足しにはなったとしている)。

ようやくペラペラが稼働した直後、グーグルが機械翻訳にAI機能を追加すると発表した。このときアイドリンは「われわれ対人工知能の戦いになったのだと認識した」という。「今後5年、グーグルと戦っていこうとはとうてい思えなかった」。加えて、ユーザーはビジネス系コンテンツの翻訳にはお金を払うものの、娯楽系コンテンツにはお金は使わないなど、市場環境も把握し始めた。そこで出した結論は、「この市場は思った以上にずっと小さいものだ」ということだった。

となれば、新たなビジネスアイデアを探すしかない。ところが、彼の技術系の共同創業者はペラペラをやめ、「シリコンバレー級」の収入を得られる大企業に転職することを決めてしまった。東京に1人残されたアイドリンだが、銀行にはまだお金が残っている。そこで、アメリカから日本に持ち込めそうな、実績のあるビジネスモデルを探し始めた。

60分以内に花を配達するサービス、サブスクリプション方式の昼食サービスなど、似たような案がいくつか思いついた。開発者がいなくなったアイドリンは、アイデアを思いつくたびにアプリ開発を外注せねばならず、銀行残高はどんどん減っていった。

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