26歳で3度もスベった起業家が諦めないワケ 起業家に必要なのはアイデアか姿勢か

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アメリカで大ヒットした「HQ Trivia」をベースとした賞金獲得ゲーム「MyQ Trivia」というアプリを立ち上げたときは、直後にラインやグノシーといった大手が後に続いてきてしまった。彼らはマーケティングや賞金に、アイドリンには及ばない費用を費やした。加えて、大手にはアイドリンをはるかにうわまわる開発費用やリソースがある。やがて彼はほぼすべてのキャッシュを使い果たしてしまう。「あのまま続けていたら本当に手持ち金がなくなっていた」とアイドリンは振り返る。

キュッツイーもペラペラもゲームもうまくいかなかったアイドリン。10年前の日本だったら、彼は「失敗」の烙印を押され、セカンドチャンスを与えられることもなかっただろう。

起業家としての「姿勢」が重要だ

しかし、環境は変わりつつある。2012年に筆者がグロービス経営大学院学長で、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表の堀義人氏にインタビューした際、同氏はこう話していた。「武士道精神を尊重する日本で重視されるのは、成功や失敗という結果ではなく、起業家の姿勢だ。大事なのは、真摯かつ前向き、オープンマインド、そして人の話をよく聞き、よく学ぶ姿勢だ。こうした姿勢を持つ起業家が失敗したり、失敗したことで責任を取らされているのは見たことがない」。

アイドリンはまさにその生きた証拠であり、だからこそ、2度目、3度目のチャンスが与えられてきたのだろう。

残念なことに、ペラペラに投資した投資家たちはお金を失うことになる。が、アイドリンによると、投資家のお金が残っていた場合でも、事業環境が変わらない場合、「ピボット(事業戦略の方向転換)」はよくあることだという。

さて、希望を持ち続ける起業家、アイドリンは新たに「ハッピーアワー」というライブストリームのゲームアプリを開発するため、新たに会社を立ち上げる予定だ。そして、今度はロサンゼルスに向かって、約400万ドルの評価額に対して約100万ドルの資金を得ようとしている。すでに、新たな技術系の共同経営者を見つけ、今度は日本以外の国で起業する考えだ。

今度こそ成功するだろうか? それは誰にもわからない。どんな起業アイデアが実を結ぶかなんて、アイデアを考えている時点でわかることなんてほとんどないのだ。ウーバーだってそうだ。いったい誰が赤の他人と乗り合わせるビジネスがはやると思うだろうか。起業家にとって重要なのは、アイデアと同時に、何かが失敗したとしても前向きな姿勢を保ち続けることだ。そう考えると、アイドリンには起業家の資質が備わっているのは間違いない。

リチャード・ソロモン 経済ライター、Beacon Reports発行人

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Richard Solomon

英ロンドン・ビジネス・スクール卒。欧州のICT業界向けメディア、ESNメディアグループの発行を手掛けた後、来日。日本社会が抱える問題や日本のリーダーなどに関するメディアBeacon Reportsを発行。The Nikkei Asian ReviewやThe Japan Timesなどにも寄稿している。

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