「WRX S4」にSTIスポーツが設定された意味 スバルの象徴的なモデルになるはずだ

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アメリカ車でも、キャデラックATSには「ATS‐V」というグレードが設定されている。世界で見ると、比較的小型の4ドアセダンはいずれも高性能バージョンを設定している。またそれらは、ことさらに速さや馬力のみを追求するのではなく、内装の上質なデザインやつくり、先進装備にもこだわりを持つ。

購入する顧客は、必ずしもサーキット走行など限界性能を追求したり、スポーツドライビングを頻繁に楽しんだりする人だけでなく、日常的な生活の中で上級さや上質さを求める人たちが含まれるはずだ。性能と心地よさに究極を求める人たちである。

体を的確に支えるバケットタイプの座席(写真:スバルグローバルメディアサイト)

それら高性能かつ上級な車種は、何より高性能であるがゆえに、日々の運転でも的確さや手応えのよさなどを通じ、運転の緊張から解放され、安心と安全をもたらす。減衰の利いたやや硬めの乗り心地さえ、実は路面の荒れを素早く吸収することで快適さをもたらし、体を的確に支えるバケットタイプの座席は、疲労軽減をかなえてくれる。先進技術は、万一の事故を回避したり、渋滞中の操作の苦痛を和らげたりする。

あらゆる意味で高度であることを追求することにより、クルマは速さだけでなく快適さをもたらすのである。クルマというものを大衆化した背景に、大量生産と合理化の進歩があるが、そもそもカール・ベンツがガソリンエンジン自動車を発明してからの数十年は、1台1台手作りするような手間のかかる生産体制であったこともあり、クルマは非常に高価であった。しかしアメリカのヘンリー・フォードが大量生産方式を開拓したことにより、大衆化の道がはじまった。

それはどの商品についてもいえることだが、大衆化した商品は日々便利であっても、必ずしも生活にゆとりや豊かさをもたらすわけではない。苦痛なく消耗していく手助けをするだけだ。一方、職人が作り上げた商品は、100円ショップで手に入れる製品より何倍、何十倍も高価であるとはいえ、機能だけでなく使い心地や手触りにまで心動かされるものがある。そして永い間使って飽きない奥深さがある。

個性豊かな商品こそがもたらす存在理由

プレミアムブランドを自任する自動車メーカーが、高性能な4ドアセダンを維持・販売し続ける背景に、商品のもう1つの価値を認めているからではないだろうか。

スバルが、プレミアムブランドであることを主張しているかどうかはともかく、大手自動車メーカーのような大量生産を主題とする企業でない以上、個性豊かな商品こそが存在理由をもたらす。

象徴的なのは、水平対向エンジンや、シンメトリカル(左右対称の)4輪駆動システムである。それらによって、より低重心で安定した走行をもたらすとしている。独特なエンジン音や、4輪駆動による手応えの確かな運転感覚が、スバルらしさを体感させる。実際、スバル車はそれらの機能により、同じクラスの他車に比べ価格は高めの設定だ。

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