大企業の「化石並み情報システム」に潜む爆弾 レガシーシステムは「2025年の崖」で崩壊する
企業が、レガシー・システムの問題を抱えるようになってしまった背景には、次のような事情がある。
わが国の企業(とりわけ大企業)は、1970年代以降、世界に先駆けて情報システム化を推進し、競争力を向上させてきた。しかし、その過程で、各事業の個別最適化を優先し、企業全体の最適化が図られなかったため、年月とともに、システムが次第に肥大化・複雑化してしまったのである。
また、大規模なシステム開発を行ってきた人材が定年退職の時期を迎え、人材に属していたノウハウが失われつつあるため、システムのブラックボックス化も起きている。
このレガシー・システムの問題は、日本企業に限らず、欧米の企業も、多かれ少なかれ、直面している問題ではある(参考)。
しかし、わが国の場合には、こうした事情に加えて、IT産業固有の構造も、このレガシー・システム問題の原因となっている。
わが国では、ベンダー企業がユーザ企業のために情報システムを開発し、納入する受託開発構造が確立している。つまり、ユーザ企業は、情報システムの開発をベンダー企業に依存しているのであり、その結果として、レガシー・システムの問題も放置しがちになる。
また、わが国の企業はスクラッチ開発を好み、汎用パッケージを導入する場合ですらも、自社の業務に合わせて過剰にカスタマイズをする傾向が非常に強い。しかも、ベンダー企業にとっては、細かく手数のかかるシステムの開発を受注するほうが、自社の売上の増大につながるので、顧客企業からの過剰なカスタマイズの要求を否定しない。
一般論として言えば、品質向上のための改善の積み重ねは好ましいことである。それが日本企業の強みとされてきたのも事実だ。しかし、情報システムの場合には、それが複雑化やブラックボックス化をもたらし、中長期的には、コスト高や競争力の低下を招いてしまうのである。
レガシー・システム刷新に踏み切れない理由
しかし、なぜ、多くの経営者は、デジタルトランスフォーメーションの必要性を認識しながら、レガシー・システムの刷新には踏み切れないのであろうか。その理由としては、次の3つが考えられる。
第一に、レガシー・システムの刷新には、巨額の費用を要する。
たとえば、食品業のA社は、30年以上利用していたシステムを、8年間で約300億円かけて刷新した。保険業のB社もまた、約25年利用した基幹系システムを、4~5年かけて約700億円を投じて刷新した。さらに運輸業のC社に至っては、50年経過した基幹系システムを刷新するのに、7年間でおよそ800億円を投じたという。
経営者にとって、このような費用と年月がかかるプロジェクトを決断するのは容易ではあるまい。
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