誤解されがちな「大災害が経済に及ぼす影響」 GDPだけを見ていてはわからない

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大規模な災害が日本を襲っても、国内すべての地域が被害を受けるわけではない。被災地域では工場の生産設備が破損し長期間にわたって生産ができなくなったり、生産活動は可能でも道路や鉄道などの被災から製品の輸送に問題が起きたりして、経済活動が低下する。

しかしその一方で、企業は被災地以外の地域の工場で生産減少を補おうとする。また、災害で破壊された社会資本や住宅などの建築物の再建のための土木建設などの生産活動が活発になる。短期的には政府が中心となって大量の生活物資を他の地域から輸送するので、こうした物資の生産や輸送活動という経済活動も活発化する。

少し時間が経てば、災害で住宅や家財を失った人たちが、生活を立て直すために住宅を再建し耐久消費財や衣料品などの生活用品を購入するという需要が発生する。そうした需要に応えるために生産活動も活発化し、こうした生産を支えるための原材料の輸入増加や、必要となった物資の一部などの完成品の輸入増加がおこる。

GDPの需要項目で考えると、「政府消費」、「公的固定資本形成」、「民間住宅投資」、「民間設備投資」、「民間消費支出」が増えてGDPを押し上げる一方、「輸入」が増加してGDPを減少させる。大災害の直後には全国的に家計のマインドが悪化したり、自粛ムードが広がるなど消費を押し下げる影響もあるが、企業に生産能力の余剰があれば、大きな災害による復旧や復興の需要によって、プラスの方向に作用することもある。プラス・マイナス両方の影響が出る結果、年単位のGDPに巨大災害の痕跡を見つけ出すことは難しいのだ。

大災害の打撃はフローではなくストックに表れる

もっと周期の短い経済統計では、大災害の影響を見つけることができる場合もあるが、それも短期間で見えなくなる。

たとえば鉱工業生産指数の動きを見ると、1997年の阪神淡路大震災では、1月に前月比で低下しているものの、この程度の指数の低下はかなりの頻度で起こっており、ここで日本経済に大きなショックがあったと指摘するのは、まず不可能だ。

東日本大震災では部品供給の停滞などサプライチェーンの寸断がより大規模に起きた。震災のあった2011年3月の鉱工業生産指数は前月比で大幅な低下となっており、はっきりとした影響を見つけることができる。電力供給能力の低下に伴う停電や節電要請などの影響があったことから、全国的に生産活動が大きく低下したと考えられる。

こうした要因から東日本大震災では阪神淡路大震災に比べて鉱工業生産指数の落ち込みは大きく長かったが、それでも2011年夏頃にはほぼ震災前の水準に戻っている。過去の経験では、自然災害による生産活動への影響は意外に短期で終息している。

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