製紙業界の異端児トライウォール、アジア進出で先行し内需産業の殻を破る

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製紙業界の異端児トライウォール、アジア進出で先行し内需産業の殻を破る

製紙は典型的な内需型産業だ。重量の割りに付加価値が低い紙は、長距離輸送に適さないため、消費地生産が基本。そのうえ国内需要量は、ここ数年、3100万トンを挟んで前年比1~2%程度の増減しかない横ばい状態が続いている。不況に強いが大きな伸びもない。今後は、紙文書の電子化などの逆風もあり、成長力の乏しさに対する業界の危機感は強い。

2強の一角、王子製紙は上海近郊に工場を建設中で、2010年に第1段階として年産40万トンの大型洋紙工場を稼働させる。対する日本製紙グループは2015年に連結海外売上高を30%に引き上げるという目標を打ち立てている。だが、現状では王子製紙、日本製紙とも海外売上比率は10%に満たない。輸出は、国内需給がだぶついたときの調整弁にすぎなかった。

こんな中、株式非上場ながら、すでに海外売上比率66%という驚異的な数字を上げている企業がある。トライウォールだ。

2トンの自動車も運べる重量段ボールの先駆者

トライウォールはBtoB専門の段ボール会社。顧客は、自動車、家電、重機など重量物を生産するメーカーで、大半が基幹部品などの工場間輸送に使われる。トライウォールの主要製品「トライパック」は、針葉樹のバージンパルプを原料とする分厚い板紙を使った三層構造の段ボール。設計次第で、最大2トンもの重量物を運搬できる。

特殊用途なだけに、競合メーカーは少ない。王子製紙グループの王子インターパックと、非上場の山田ダンボールがあるが、山田ダンボールからは製品供給を受けており、協力関係にある。もう一つのライバルは、重量物輸送の90%超を占める木箱。トライパックは、木箱に比べ重さが半分以下で済むうえ、容積も2~3割低減できる。これによる輸送費の削減というメリットを強みに、攻勢をかける。

10月28日にジャスダックに上場する予定だったが、株式市場の急落を受けて延期した。業績は上場できるほどに好調だ。原動力は中国にある。日本の製紙各社はこれまでほとんど海外市場に目を向けてこなかった。だが、トライウォールは日本をベースにしながらも、海外展開を業容拡大の中核に据えてきた。

対象エリアは、中国、インドを含むアジア圏。なかでも、ここ数年業績を底上げしているのが中国だ。直近2年は中国へ重点的に投資している。現在37ある海外拠点のうち、28拠点が中国関連地域。しかも中国には、07年に50億円を投じて買収した貼合工場2拠点がある。波形の中芯を板紙と張り合わせる工場で、中国国内だけでなく東南アジアへの供給も担う。これまで生産面では外注を基本戦略としてきたが、思い切って自前の工場を持った。


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