34歳貧困男性が「今が幸せ」と感じる深刻原因

ブラック企業で働くよりバイトのほうがいい

カナメさんはこれまで10社近い会社で正社員として働いてきた。そこでは、さまざまな違法・不当な働かせ方がまかり通っていた。いわゆるブラック企業が、いかに野放しにされているかという話である。同時に、彼には実家という“一時避難先”がなく、失業しても、まともな転職先を探す余裕もなかったのだろう。

オール電化システムの購入を勧める営業の仕事では、会社が決めた出退勤時刻に従い、朝礼にも参加しなくてはならなかったが、個人事業主としての契約だった。1日200軒以上の住宅を訪問し、やり取りはボイスレコーダーで録音するよう命じられた。トラブル防止と説明されたが、「僕たちがさぼっていないかを監視することが目的だったと思います」。

毎晩の帰宅時刻は、日付が変わる頃。顧客が家にいる可能性が高い週末は、まず休むことはできなかったという。

その後、勤めたIT関係の会社では、会社で寝泊まりするのは当たり前。残業時間や深夜割増手当などという概念はないも同然だったという。

ただ、営業はむいていたのか、カナメさんの成績は悪くなかった。上司や同僚から「お前のおかげで目標達成だ!」「支店のエース」などと言われると、うれしかったという。

「洗脳されていたと思います。会社で寝泊まりしていたときも、不思議と苦痛じゃなかった。頭を空っぽにしないと、頑張るのっていいなと思わないと、やってられないというのもありました」

収入は、オール電化の訪問販売だけは歩合制だったため、月収40万円近くなることもあったが、それ以外は15万円から、多くても20万円台なかば。正社員とはいえ、ボーナスは一度ももらったことはなく、有給休暇を取ったこともないという。

同じことの繰り返し

一方で、カナメさんが会社を辞めた理由は、「人を見下すような上司の怒鳴り方が、母親に似ていた」「異動先の支店で営業成績を上げられず、給料が下がったから」「インフルエンザになったから」「やりがいを感じない」など、必ずしもやむをない事情があったわけではないようだった。

ブラック企業など、とっとと辞めるというのはひとつの選択肢だし、メンタル不調に陥るよりはずっといい。しかし、転職先もまたブラックでは、同じことの繰り返しだ。

「不況と言われる割に、選ばなければ、仕事はあっさり見つかったんです。だから変に辞め癖が付いてしまったというか……。」

ホームレスを経験したのは、30歳を過ぎたころ。きっかけは、当時住んでいた部屋から引っ越しをするため、退去手続きを取った矢先に、勤務先の社長とトラブルになり、会社を辞めたことだった。すぐに敷金礼金を用意して新しい部屋を見つけることは難しく、宿無し、一文無しの生活は4カ月に及んだ。年齢が高くなるにつれ、特に正社員の仕事は確実に見つけづらくなっていた。

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