石破茂氏「想定超える善戦」が持つ大きな意味 注目の進次郎氏は石破氏支持を表明して投票

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新聞、テレビが大きく報道したのは選挙戦最終日となった19日夕刻の安倍、石破両氏の「最後の訴え」。首相は秋葉原、石破氏は渋谷で、それぞれ聴衆を前に自らへの支持を身振り手振りで訴えた。首相の選んだ秋葉原は昨年の東京都議選最終日に、聴衆からの「辞めろコール」にいら立った首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放って自民敗北の原因をつくった因縁の場所だ。

首相演説には麻生氏も同伴したが、首相が乗る街頭宣伝車の周囲を多数の首相支持派議員が囲み、首相を批判するため街宣車に近づこうとする聴衆を排除したため、演説から離れた場所では首相陣営と反安倍グループによる小競り合いも目立った。

さらに、都議選時と同様に「森友学園」前理事長の籠池泰典被告も姿を見せたため、カメラマンらも首相の演説より周辺の騒ぎを取材するという「後味の悪い幕切れ」(自民幹部)となった。籠池氏は記者団に「(首相は)嘘を言ったらいかんな。国民をだましたらあかん」などと昨年と同様に首相を厳しく批判した。

こうした最終日の動きは、時間的に投函が19日締め切りの党員・党友票には影響しなかったが、斎藤氏の「圧力発言」をめぐる一連の騒動は首相サイドの強圧的対応を浮き彫りにしただけに、「これが地方票での石破氏の善戦につながった」(自民幹部)との見方は広がっている。

一方、渋谷のハチ公前を選んだ石破氏は「自民党は謙虚な、公正な、あらゆる人に対して誠実な、正直な政党でありたい」とこぶしを振り上げることで、首相の1強支配体制による自民党政治の歪みを一般国民にアピールした。

進次郎氏は「石破氏支持」で「閣僚抜擢なし」か

20日午後の自民党本部での投票には出席した自民党所属国会議員がやや緊張した表情で順次投票した。事前のメディアの聞き取り調査などで大多数の議員の支持動向が判明していたが、結果をみると過去の総裁選と同様に「10票単位での造反」があったことは間違いない。開票結果を聞く首相の表情はややこわばり、石破氏の周囲では笑顔が広がった。

注目の進次郎氏は6年前と同様に石破氏に投票、気骨を示した(写真:共同通信)

その中で、最後まで注目された小泉進次郎筆頭副幹事長は、投票会場に入る際に「石破さんに投票する」と明言した。

石破氏支持は6年前と同様だが、理由については「自民党は違いを認める党になるべきだ」として、「物言えば唇寒し」といわれる党内の閉塞状況への批判を石破氏支持に込めた形だ。

小泉氏の選択について、首相サイドは「結果的に大きな影響はなかった」(細田派幹部)と冷静に受け止めたが、「最後まで迷っていた10人弱の議員を石破氏に誘導した」(石破派幹部)との指摘も出ている。このため首相陣営には「これで進次郎氏の内閣改造での閣僚抜擢も消えた」(麻生派幹部)との声が広がる。

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