日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…

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だが、これでやれやれと思ってはいけない。「あずま」の車両を本線上で試運転したところ、設置後30年にもなる旧式信号機やポイントへの電磁干渉が判明。このままでは「電化区間でもディーゼルモードで走らすしかない」(BBC報道)とも伝えられており、別の意味でバイモード車両の利点が生きるのではないかという異常な見方まで語られている。筆者が調べたところ、本稿の執筆時点でこの問題は解決していないもようだ。

次の焦点は「HS2」車両

今後の英国鉄道界で最も大きなトピックといえば、やはり高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」の建設着手だろう。英国は鉄道発祥の地とはいえ、高速鉄道についてはフランス、ドイツはもとよりイタリアやスペインよりも整備が遅れている。目下のところ、ロンドン・セントパンクラス駅と英仏海峡(ドーバー海峡)をくぐる「ユーロトンネル」の入り口を結ぶ全長109㎞の「HS1」があるにとどまる。

HS2は1期工事でロンドン・ユーストン駅とイングランド中央部のバーミンガムの間2026年までに結ぶことを目指している。現在、英運輸省による車両発注先の選定手続きが進められており、正式入札を行った会社は、日立がボンバルディア(カナダ)と共同で名乗り出ているほか、独シーメンス、スペインCAF、同タルゴ、そして中国中車(CRRC)も手を挙げている。

入札仕様によると「概ね54編成、1編成の定員が1000人以上、最高時速は360㎞」などとなっており、契約額は27億5000万ポンド(およそ4000億円)に達する。日立がIEP車両で総額1兆円規模もの車両を受注したが、果たしてこの実績が評価される格好となるだろうか。

今まで述べたように、日立は英国で新たな市場開拓を確実な形で発展させてきている。残念なことに、今年6月にはロンドン地下鉄ピカデリー線向け新型冷房車両の入札では、同社がボンバルディアとコンソーシアムを組んで参加し、落札が期待大とされていたにもかかわらず、「工場を英国に建てる」と明言したシーメンスに取られる格好となってしまった。

しかし英国では引き続き、HS2はもとより在来線各線で新型車両への更新が進んでいる。日本の信頼度の高い近郊車両が英国でさらなる活用範囲を広げて行くのだろうか。今後の展開を期待したい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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