ショッピングモールで服が売れない深刻問題 低価格化やヒット消滅だけが理由ではない!

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三井不動産が展開するショッピングセンターのららぽーとにも、多くのアパレルが店を構える(記者撮影)

2000年の大規模小売店舗立地法の施行以降、デベロッパーはイオンモールやららぽーとなどの大型SCの出店ラッシュを続けた。アパレルも大量出店への準備やそのための人材確保に追われ、物づくりの優先順位は徐々に下がっていった。

ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストは「他社との差別化のカギとなるはずの商品企画や生産を外部委託することで、低価格でも利益を稼ぐ手法が多くのSC向けブランドで定着してしまった」と指摘する。

止まらない商品の”同質化”

物づくりへの投資を抑えながらも、アパレル側は確実に売れる商品をどう投入するかを模索する。特に最近はネット通販の浸透などで各社の売れ行き動向が把握しやすくなり、シーズン途中で他社の売れ筋商品に似たものを追加投入する会社が増えた。

その結果、各ブランドの商品の“同質化”が進み、消費者も価格のみで比較購買する傾向が強まっていった。アパレルに詳しいオチマーケティングオフィスの生地雅之氏は「『みんなで渡れば怖くない』と売れ筋商品のコピー生産を続け、今は各社が”怖い”状況に陥っている。必要以上の仕入れを抑えて、自社の味を出せる商品で差別化する必要がある」と警鐘を鳴らす。

今年に入り、店頭や自社サイトではセールを抑制して新商品を取りそろえ、売れ残った在庫はゾゾタウンなどECモールサイトで集中的に販売するなど、販路の使い分けに知恵を働かせるSC系アパレルも出てきた。

とはいえ他社と同じような商品が並んでいるのでは、消費者はより安いものを求めるだけ。生産体制を抜本的に見直し、価格以外でも商品の訴求力を高めていかないかぎり、SC系アパレルの復活は遠のくばかりだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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