ショッピングモールで服が売れない深刻問題 低価格化やヒット消滅だけが理由ではない!

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カジュアルブランド「グローバルワーク」を展開するアダストリアは、業績不振を受けて経営体制を刷新した(記者撮影)

現状を深刻視した企業の中には、経営体制の刷新で立て直しを図ろうとする動きも出てきた。アダストリアは今年3月、創業者である福田三千男会長が社長も兼務することに。前期に大幅赤字へと転落したジーンズカジュアル大手のライトオンも4月、経営推進本部長で38歳の川﨑純平氏が社長に就任し、営業本部の拠点を茨城・つくばから東京・原宿に移した。

類似商品の比較が容易に

2000年代以降、百貨店アパレルが凋落する傍ら隆盛を誇ったSC系アパレルに何が起きているのか。「いかに低価格化の渦に巻き込まれないようにするか。とにかく今はそこに気をつけている」。SCにも店舗を構える大手アパレルの経営幹部はそう危機感を募らせる。

SC系アパレルの頭を悩ませているのが、価格競争の激化だ。海外生産へのシフトで始まった衣料品の低価格化は、消費者の節約志向の強まりを受け、年々顕著になっている。店舗販売経験のある業界関係者は「今は若い人ほど即決しない。『とりあえずメルカリで似た商品を探そうか』と、さらに安いものを求めていく」と話す。

衣料品のネット通販が急速に広がり、消費者は容易に類似商品を比較できるようになった。「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を筆頭とするECモールでは、クーポンによる値引き合戦も熱を帯びる。アパレル業界では2015年に大ヒットした「ガウチョパンツ」のような幅広パンツ以降、大きなトレンドの変化がないことも、顧客の来店頻度が下がる要因となった。

ただ、低価格志向の強まりやヒット商品の減少は表面的な問題にすぎず、SC系アパレルの不振の原因はさらに根深い。「ここ最近、『このブランドはこういう商品』と言えるような特徴が消えてきたように感じる」(商業施設のデベロッパー幹部)。

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