京急vs.塚田農場、品川ビル立ち退き戦争勃発 ドル箱店をめぐり、凄絶な攻防戦が始まった

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飲食店の立地に詳しいコンサルティング会社、ピープル&プレイスの松下雅憲・代表は「立ち退きに当たっては、同水準の利益が得られる物件を提示してくれないかぎり、首を縦には振らないだろう。だが店舗利益が年間4000万円というのはすごい水準で、移転先でも同様の利益を創出できる保証はない」と、立ち退きを拒絶する各社の心中を分析する。

再開発スケジュールに影響も

現在の品川再開発は都市計画決定こそなされたものの、計画に沿った権利関係の調整やビルの解体を進めるために必要な事業認可はこれからだ。

また都市計画決定そのものも、あくまで大枠の方向性を定めるのみで、京急が主張する立体交差化が含まれているわけではない。訴えられたある会社は「大企業(京急)が自己の利益を最大化すべく計画したものだ」と反発する。

今後のシナリオは流動的だ。裁判の焦点は、テナントの立ち退きには「再開発にビル解体が不可欠」という京急の主張が通るかという点にある。最も理想的な結末は早期に和解に至ることだが、係争中の会社のみ対し移転補償を手厚くすれば、すでに合意に至ったテナントとの公平性が問題となる。

移転先となる不動産の確保も課題だ。折しも不動産投資の過熱を受け、短期間での転売を目的とするファンドが品川周辺の不動産を高値で落札。長期保有が目的の京急は思うように不動産を取得できていない。

京急が昨年12月に行った、立体交差化に関する地元向け説明会では、事業認可は2020年ころに取得し、リニアが開業する2027年をメドにおおむね工事が終了する見込みだ。ビルが解体できなければホームの移設が遅れ、再開発全体のスケジュールに影響が及ぶおそれもある。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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