京急vs.塚田農場、品川ビル立ち退き戦争勃発 ドル箱店をめぐり、凄絶な攻防戦が始まった

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立ち退きに当たっては、以前から水面下で動きがあった。京急が第10ビルの建物および土地を別の不動産会社から取得したのは2006年のこと。京急関係者によれば、「ビル購入時点で再開発を意識しており、駅前周辺の『四隅』を押さえたかった」という。

京急は高輪口に多数の不動産を所有しているが、こと駅前については、第10ビルの場所が空白地帯として残っていた。

取得からちょうど10年、遅くとも2016年秋から地下の飲食店を含む34のテナントと賃貸借契約の終了と立ち退きについて交渉を開始した。1つ、また1つと退去の容易な定期借家契約へと切り替え、今年に入ってからは計20以上のテナントから立ち退きの同意が得られた。

居酒屋にとって品川はドル箱

ただ、一部のテナントが立ち退きに難色を示した。京急は規模に応じた立ち退き料として1000万円から1億5000万円を提示し、移転先の物件探しにも奔走。だが移転補償や移転先の物件について折り合えず、賃貸契約期間は更新されぬままテナントが営業を続ける事態となった。そしてとうとう、決着は法廷へと持ち込まれた。

立ち退きを渋る5者のうち、1人と3法人は居酒屋の店舗として第10ビルに入居している。立ち退きを渋るのは、居酒屋にとって品川はドル箱エリアだからだ。

訴えられた1社が、居酒屋「塚田農場」などを運営するAPカンパニーだ。同社は、第10ビルに2011年2月1日から「塚田農場 品川高輪店」を出店している。裁判所に提出された資料によれば、品川高輪店の店舗利益は2017年4月から2018年2月までの11カ月間累計で4273万円。APカンパニーの直営200店舗以上の中で最も利益を生んでおり、単純計算で同社年間営業利益(3.3億円)の1割以上にも上る。

10年以上前から「くろ◯ 品川高輪口駅前店」を運営する居酒屋最大手モンテローザは、同店舗について「ターミナル駅の西口ロータリーに面する建物で、駅の乗降客や勤め帰りのサラリーマンが多数集まってくるという、居酒屋店舗には極めて適した客の流れが出来上がっている特別な場所。多大な売上や利益を獲得できる優良店舗」(裁判資料)とし、立ち退きに応じる気配はない。

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