なぜ今?東急が鉄道を「分社化」する真の狙い 不動産などの分割「検討せず」には理由がある

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鉄道事業を分割する理由について、藤原常務は「事業環境を取り巻く環境の変化へいっそうのスピード感を持って対応するため」と語る。今年3月に発表された「中期3か年経営計画」の時点では「分社化については検討していなかった」としており、この半年で急速に浮上したようだ。

ただ、分社化しなくてはスピード感がある鉄道運営ができないのかというと、そんなことはないだろう。ほんの2年前、東急の幹部は「鉄道などを子会社化することにあまりメリットはない」と発言していた。鉄道と不動産の両方が関係する駅の再開発のように、複数の事業にまたがるプロジェクトについては、一つの会社で行うほうがスムーズに進めることができるからからだという。

この点について確認したところ、藤原常務は「スキームはその当時からブラッシュアップしたが、考え方は変わらない。分社化でスピード感が鈍ることのないよう、気をつけなくてはいけない」と語る。

いっぽうで、不動産など鉄道以外の事業を分割する考えについては「検討していない」と、藤原常務は明確に否定した。鉄道同様、不動産も分割するほうが「環境の変化にスピード感ある対応」ができるはずだが、東急グループ内には業界4位の大手不動産会社、東急不動産ホールディングスがある。同社は1953年に東急の不動産部門が分離して発足した会社が前身で、東急は同社株式の約15%を保有する。東急が不動産を分割しないのは、両者の住み分けが関係しているのかもしれない。

「渋谷再開発にメド」が契機?

日本の人口が減少に転じる中で東急沿線の人口はまだ増え続ける。鉄道事業において、混雑対策は喫緊の課題だ。時差通勤者へのポイント付与といった小手先の対策ではなく、渋谷駅のホーム増設といった抜本的な対策を、4月に東急のトップに就いた髙橋和夫社長は「検討する」としている。つまり、鉄道分社化は、今後抜本的な混雑対策を行うために必要な組織改革とも考えられるのだ。

2027年度頃の渋谷駅周辺のイメージ(画像:東京急行電鉄)

鉄道分社化を発表した翌日の9月13日は、渋谷駅の再開発によって誕生した複合施設「渋谷ストリーム」がオープンする日でもある。そして、渋谷駅直上の超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」が2019年秋頃に開業する予定だ。これは鉄道新会社の発足時期とほぼタイミングを同じくする。

今回の発表には、鉄道と不動産の両事業にまたがる巨大プロジェクトである渋谷再開発に一定のメドがついたことで、今まで以上にスピード感を持って鉄道事業の運営に取り組むという意味が込められているのかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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