社長解任のJPHD、保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー

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懸念されているのは、保育士が保育園企業他社に移動しているのではないか、ということだ。保育園企業は、多大な補助金を売り上げに計上している点に特色がある。受け入れる子どもの数は保育士の人数に左右され、それによって補助金の額が決まる側面がある。つまり、保育士人員の増減が損益に直結するのだ。

グループで子育て支援事業を手掛ける日本保育サービスには2000人を超える保育士がおり、昨年末まで保育園の数に合わせ、保育士も順調に増えていた。ただ、人手不足を受けて、業界内では保育士の獲得合戦が激化している。特に保育士は新年度開始前の3月末に大量に転職する傾向がある。

現状で会社側は「4月以降、保育士が減っているという感覚はない」とする。いずれにせよ、保育士の経営に対する信頼を取り戻すことが第一の課題になる。

金融筋の信頼は取り戻せるか

発表された長期ビジョンでは、2025年3月期に連結で売り上げ1000億円を目指すとしている。現在の3倍を軽く超える規模急拡大であり、異例の積極的な中期計画を開示した。

古川新社長は、「M&A(企業の合併・買収)を含めて、協力できる企業とは資本提携や業務提携を積極的に打ち出していく」と表明している。その内容としては、子育て支援事業の質的成長と既存事業の拡大で500億円、M&A・資本提携・業務提携による新しいビジネス価値の創造で500億円という内訳を明らかにしている。

同社は有利子負債129億円(総資産に占める割合は50%)という財務体質で、利益剰余金(内部留保)は54億円という会社である(2018年3月末)。手元の資金が潤沢という状況ではない。

金融筋は現状でJPホールディングスについて当惑、あるいは見定めようとしている段階といえる。M&Aをするにも長期資金をどこからどう調達するのかという問題を抱えそうだ。

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