007の映画から考えた「人間対AI」問題の本質 教師の仕事は人工知能に奪われてしまうのか
達人に共通する、そして普通の人にはまねできない能力は、何といっても、データを機械的に当てはめるのではなく、その場その場で臨機応変に、最善の判断をすることができることである。
さまざまな分野で超一流になる人たちは、失敗を恐れず、チャレンジし、葛藤しながら自分で学び続けようとするマインドセットを持っていて、自分で学び方を工夫できる。達人が悩まないわけでない。むしろ悩み、失敗することは、達人になるために欠かせないレシピである。
これからの教師に求められる資質とは
筆者が最近知り合った小学校の先生は、まだ教師になって数年にしかならないのだが、しばしば学習指導案を外れた授業をする。それは、彼女が指導案ではなく、子どもたちを見て、子どもが授業の中で疑問をもったり、興味をもったりしたところ、つまり「引っかかった」ところを見逃さず、すかさずそこを掘り下げるからである。それは子どもたちの「学びたい」という意欲に火をつける。
この先生のクラスは普通の小学校のクラスと違い、にぎやかで、子どもたちは常に発言したくてたまらない。子どもたちの目は輝いていて、休み時間も前の授業の議論を続けている。しかし、その先生は、指導案どおりに授業がすすまなかったことに悩み、しょっちゅう泣いている。
この葛藤こそが彼女を成長させ、AIではできない授業、子どもの目を学ぶ意欲で輝かせる授業をさせる原動力になっているのである。
汎用的にプリフィックスされた指導案どおりにきれいに授業をまとめることよりも、悩みながらも、その場での子どもの知識や気持ちにアンテナを張り、子どもがその瞬間にしか学べない何かを学べるように、臨機応変に子どもの反応に対応することを大事にする。
これがICT(情報通信技術)を使うスキルを持ち、ビッグデータの分析結果をAIの提案どおりに教育現場に使う能力よりも、もっと大事な、これからの教師に求められる資質である。逆に言うと、子どもの反応を無視して指導書どおりにしか授業ができない教師は、AIに取って代わられてしまうだろう。
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