007の映画から考えた「人間対AI」問題の本質

教師の仕事は人工知能に奪われてしまうのか

ボンドのボスであり、MI6を統括する「M」はこの人物に対立し、MI6と00プログラムを守ろうとする。Mは言う。

情報部員の「殺しのライセンス」は「殺さない」ことの選択を与えることでもある。暗殺のターゲットを追い詰めたら、引き金を引く前に最後の決断を 下さなければならない。もちろん、ターゲットがほんとうに世界を破滅に向かわせる脅威をもたらしているのか、事前に徹底的に調べ上げて見極める。

しかし、実際にその人物を追い詰めて目の前にしたら、その人物の目を見て、ほんとうに拳銃の引き金を引くかどうか、その場で最終判断を下さなければならない。その瞬間、ドローンや、盗聴器、監視カメラから集められた情報データはどうするか教えてくれない、と。

これは、大事なことを決定するのはビッグデータの分析するAIか人間なのかという問題の本質を突いた、実に深いことばである。

現代の最も大きな問題を、しかもグーグル傘下のディープマインド社が開発した囲碁AI「アルファ碁(AlphaGo)」が世界トッププロ棋士を破る2016年より前に気づき、この、エンターテインメントの極致の映画の主題テーマにしていたとは……。

製作チームは、だてに50年以上続く人気シリーズをつくっているわけではない、といたく感動してしまった。

AIは帰納し、人は演繹する

AIか人の判断かという問題は、帰納と演繹の問題と考えることもできる。
AIはビッグデータから、ある限定された現象について帰納的に確率的傾向を焙り出すことはできる。人間の目には見えにくい傾向を教えてくれるかもしれない。しかし、それを目の前の自分の案件の意思決定に使うか使わないかは、自分で判断しなければならない。

AIが発見した確率傾向がかなり高い数字であったとしても、確率はあくまでも確率である。80%の確率とは、1万回その現象が繰り返されたときに大体8000回くらいはこのことが起きるだろうという予測である。

しかし、今自分が直面する案件は1度限りで、1万回繰り返しはできない。この案件は80%の傾向どおりに処理するのがよいのか。もしかしたらそうでない20%に当たるのではないか。つまり、AIが帰納したことを目前の問題解決に使えるのか否かを演繹して判断を下すのは、当事者の自分しかいないのである。

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