《よく分かる世界金融危機》米金融危機は日本にどんな影響を与えるか

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株価と消費者の景況感との密接な関係は経済指標からも読み取れる。「街角景気」を反映する指標として知られる内閣府公表の景気ウォッチャー調査は、コンビニエンスストア店長やタクシー運転手など景気動向を肌で感じていると見られる人たちに3カ月前と比較した景気の現状を答えてもらい、それを指数化したもの。下のグラフを見ると、現状判断指数(DI)は最近、株価との連動を強めているのがわかる。

9月調査分では同DIが28・0Cと6カ月連続の低下。現行のサンプルで調査を開始した01年8月以来、米国同時多発テロが起きた翌月の同年10月に次ぐ過去2番目の低水準になった。金融・資本市場の迷走が消費者の動きを鈍らせ、それが新たな市場の動揺を招く。 

株安と並んで円高も懸念材料。外国為替市場では「米国が金融機関に対する公的資本注入に踏み切れば、財政赤字が一段と深刻化する」といった思惑からドルの下振れ不安が台頭している。売り上げ数量減に苦しむ輸出企業にとっては、まさにダブルパンチだ。

第一生命経済研究所の試算によれば、日経平均株価が年度末まで平均9000円、対ドル円相場が同1ドル=100円で推移した場合、08、09年度の実質GDPをそれぞれ1%ずつ押し下げるという。「両年度ともマイナス成長に転落する可能性が出てきた」(同研究所の永濱利廣主席エコノミスト)。

来年にかけ厳しい景気が続くと覚悟せざるをえない。


<KEY WORDS>
デカップリング
 「非連動」などと訳される。サブプライムローン問題をきっかけに米国の実体経済が停滞の色合いを濃くする中、経済成長の著しい中国、インドなど新興国に対する世界各国からの輸出が増加し、世界規模の景気拡大を下支えする、といった意味で用いられた。だが、新興国経済にも減速感が台頭し、株式相場も下落に転じたことで、「デカップリング」説は勢いを失った。今では「リカップリング(再連動)」説が有力となっている。

景気ウォッチャー調査
 内閣府が毎月10日ごろまでに公表。前月分の経済情勢をいち早く反映させる指標として注目度が高い。コンビニエンスストア、タクシー運転手など、全国の「景気ウォッチャー」2050人に3カ月前と比較した景気の現状を答えてもらい、それを指数化。現状判断指数(DI)は9月まで「景気が良いか悪いか」の分岐点とされる「50」を18カ月連続で下回った。向こう2~3カ月の景気に対する見方を示す先行き判断DIも併せて公表。

(週刊東洋経済)

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