ホンダCR-V日本復活も75万円値上げの不可解 車体も大型化、国内消費者に訴求できるのか

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新型CR-Vの月間販売目標は1200台。競合車種と比べるとかなり「控えめ」だ。ホンダが「アッパーミドルSUV」と定義する競合車種の今年1~6月の平均月間販売台数は、日産自動車の「エクストレイル」が4919台、トヨタ自動車「ハリアー」が3978台、全国の販売店舗数がホンダの半数以下のマツダでさえ、「CX-5」は3265台、CX-8は3076台である。今年発売されたスバルの「フォレスター」は1426台、三菱自動車の「エクリプスクロス」でも1296台だ。

トヨタ自動車の新型「RAV4」。2019年春頃、日本にも投入される予定だ(写真:トヨタ自動車)

国内のアッパーミドルSUV市場には、2019年春頃トヨタの「RAV4」が投入される。RAV4とCR-Vはアメリカで熾烈な販売競争を繰り広げており、市場拡大の大きなドライバーになることが想定される。CR-Vの新たな強みと、今後の市場の伸びを考慮すれば、月販2000~3000台ほどは期待できるはず。

そこで気になるのが、新車販売の勢いが如実にわかる事前注文台数。ホンダが明らかにした7月9日~8月28日の予約注文台数は2000台以上で、月販目標とほぼ同水準だった。売れ筋の新車の場合、月間販売目標を数倍上回る予約注文が入ることも少なくない。今回、ホンダは予約注文のペースを見て、月間販売計画を1200台に設定した可能性も高い。割高な価格や先代より大型化したボディサイズが消費者から敬遠されているのかもしれないが、2年ぶりの国内復活としてはやや寂しい立ち上がりと言える。

「軽依存」からの脱却が課題に

ホンダの国内販売の約4割が「N-BOX」などの軽自動車となっている中、登録車であるCR-Vの果たす役割は、ブランド価値以上に大きいはずだ。N-BOX は2017年度に22万台以上販売しており、その強さは目を見張るものがある。しかし、国内専用車種という特性上、他市場への展開ができず、グローバルでの数量メリットを活かせない。

ホンダが1995年に発売し大ヒットした初代「CR-V」。CR-Vには根強いファンがいるが、はたして5代目は消費者に響くのだろうか(写真:ホンダ)

だからこそ、CR-Vのようなグローバル車種で、登録車の販売比率を底上げすることは、ホンダの4輪事業にとっての最重要課題だ。前出の寺谷氏も、「Nシリーズの成功には安住できない。選択肢が幅広い中で、CR-Vなど登録車とのバランスを考えていくことは課題だ」と語る。

2年ぶりに日本に帰ってきたCR-Vは、パワーアップしているはずだ。「シビック」に続くグローバルモデルの国内市場投入を、八郷社長は「原点回帰」と強調する。しかし、日本の消費者に選ばれてこその原点回帰だ。今回の商品・販売戦略はややかけ離れ、自信がないようにも見える。「らしさ」にゆれるホンダの戸惑いが、現れているのかもしれない。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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