JRが連携強化すれば日本の観光は活性化する 西日本豪雨被害の地域復興へ、各社で誘客を
しかし、当初から地域別・機能別会社として誕生したJR各社は、年々自社の採算性を重視する姿勢を強めてきた。JR各社は国鉄清算事業団の全額出資により発足したが、同事業団が保有する各社株式の上場と全株売却による「完全民営化」を実現するためには利益確保が最も重要な経営課題であったからだ。利益確保には「自社線の利用促進」が不可欠であった。
ここで言う「自社線の利用促進」とは、単に自社線の利用を増やすと言うことにとどまらない。各社「個別」の利益が最も多くなるのは「自社線完結利用」を増やすことである。JR他社にまたがる区間できっぷが発売される場合、発売金額を各社の営業キロの割合で分配するので、自社の取り分が少なくなってしまう。よって、自社線エリアの誘客に力点が置かれる傾向が強まるというわけだ。
冒頭で提示した「都内のJR在来線の駅で東北・北海道、関東甲信越、伊豆、北陸以外のエリアのPRポスターを目にする機会が少ないのはなぜか」という問いに対する答えは、「利用者を他社エリアへ『逃す』と自社の利益が少なくなるから」と言うことになるだろう。
JR各社の収入分配は?
首都圏のJR在来線はJR東日本の管轄である。JR東日本のネットワークは、関東・甲信越・東北エリアの在来線(JR他社管轄の一部路線を除く)と東北・上越・北陸新幹線(高崎駅―上越妙高駅間)、およびミニ新幹線としての山形・秋田新幹線をカバーする。
新幹線普通車自由席(通常期)を、JR東日本の駅で発売する場合を例にとって説明しよう。東京駅―京都駅間513.6kmの普通乗車券8210円・東海道新幹線特急券4870円・合計1万3080円を発売する場合と、東京駅―仙台駅間351.8kmの普通乗車券5940円・東北新幹線特急券4430円・合計1万0370円を発売する場合を比較する。
「JRグループ」として見れば、乗車距離が長いほど発売金額も高くなるので、東京駅―京都駅間のほうがJRグループ全体としての収入は増えるはずだ。だが、JRの運賃・料金収入は各社の管轄区間の営業キロ(の割合)に応じて各社の収入に計上される仕組みとなっている。
上記の場合、東北新幹線はJR東日本であるので東京駅―仙台駅間の発売金額1万0370円全額がJR東日本の収入になる。これに対し、東海道新幹線はJR東海の路線として東京駅―京都駅間の発売金額の大部分がJR東海の収入となる。JR東日本に分配される金額は「東京都区内」の営業キロに相当する金額と発券手数料のみである。
よって、JR東日本にとっては東京駅―京都駅間よりも、東京駅―仙台駅間の利用を獲得するほうが収入が多い。
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