JRが連携強化すれば日本の観光は活性化する 西日本豪雨被害の地域復興へ、各社で誘客を

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しかし、2030年度末に北海道新幹線は札幌駅まで延伸の予定だ。同新幹線札幌延伸まで10年以上も先の今、JR東日本が北海道をPRする狙いは、札幌延伸へ向けた地ならしにあると思われる。JR東日本は来春の完成を目指して、東北新幹線の試験車両「ALFA-X(エックス)」を開発中だ。目標営業最高時速は360kmで、速度向上が実現すれば現在はほぼ航空の独占状態にある東京―札幌間の移動需要の一部を取り込む道筋が見えてくる。

首都圏・東北地方と北海道新幹線の間の往来が増えれば、東北新幹線の利用増の形でJR東日本の収入が増える。札幌駅からアクセス可能な北海道各地の観光地を今からPRしておくことは、北海道新幹線の価値向上につながりそうだ。また北海道のPRは、不採算路線を多く抱え経営難に陥っているJR北海道への営業支援という側面もある。JR東日本は上場会社であるゆえに困難な金銭支援の方法をとらず、人的支援や観光PRを含む営業支援を強化している。

できることからJR各社の連携拡大を

JR東日本とJR北海道のようにJR各社同士が協力関係を強化する術は本当にないのだろうか。筆者が日常的に利用する都内のJR線の駅では、「新宿から木曽エリアへ JR East(JR東日本) × JR Central(JR東海)」のポスターが掲示されている。都内から中央西線木曽エリアへは中央東線塩尻駅経由で向かうのが通常であり、JR東日本の収入が大きい。このように、JR各社にメリットがある場合や、JR各社間で競合関係が起きない場合は、JR他社とも連携しやすそうだ。

北陸新幹線E7系。北陸の観光キャンペーンではJR東日本・JR東海・JR西日本の3社がタイアップしている(撮影:尾形文繁)

また、”Japanese Beauty Hokuriku”キャンペーンではJR東日本・JR東海・JR西日本の3社がタイアップしている。これも片道北陸新幹線・片道東海道新幹線といったルートを売り込むことができ、JR東日本とJR東海にとってメリットを見出すことができる。北陸はJR西日本エリアであるが、JR東日本にとっては新幹線東京駅―上越妙高駅間が自社の管轄のため利用促進に取り組みやすいと考えられる。

JR東日本の駅では東北・北海道のPRポスターが多いことを述べたが、確かに東北への誘客は東日本大震災からの復興を支援する意味で大切である。一方、JR西日本は8月23日に、鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県とともに、7月の豪雨による風評被害などで観光需要が落ち込んだ中国・せとうちエリアへの国内外からの誘客促進を目的として「がんばろう!西日本」キャンペーンを実施・展開することを発表した。

このキャンペーンでは「特別協力」にJR四国が、「協力」にJR北海道、JR東日本、JR東海、JR九州がそれぞれ名を連ねた。全国のJR線の駅で西日本エリアへの積極的なPRを展開して、被災地支援や地域活性化を後押ししてほしい。可能なところからJR各社の連携を拡大することが、利用者の利益を増やし、地域に活力をもたらすはずである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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