日光で消えたフランス人女性を知りませんか

失踪から約1カ月、ベロンさんの素顔と足取り

警察とベロンさんの家族が協力し、目撃者を求めてパンフレットを配布したところ、電話で80件の情報が寄せられた。すべて調べたが、ここでも手掛かりは得られなかった。8月10日、失踪当日に欧米人を目撃した人の証言内容に基づいて、警察官と救助隊60人が捜索犬を伴い、ドローンやヘリコプターの援助を受けて鳴虫山の一部を捜索したが、この捜索活動でも何も収穫はなかった。

また、警察は日光山中を流れる大谷(だいや)川に点在するダムを管理する東京電力にも聴取を実施した。7月28日には、日光市内で大雨が降っており、気象庁は24時間の降水量2445ミリを記録している(1974年以降2番目の降水量)。この雨によって、地面は滑りやすくなっていたうえに、川の流れも激しくなっていた。

行方不明当日は相当疲れていた可能性も

ベロンさんは2日前に来日したばかりで時差ボケも残っていた。そのうえ、危険と言われるほどの暑さや湿気によって、行方不明になった当日は相当の疲れがあったと見られている。体に厳しい環境下で、持病のてんかんを発症したおそれも考えられる。誤って大谷川に落ちたとすれば、そのままダムを通り抜けて下流へと流されていき、およそ400キロ下流の海にまで到達した可能性も十分ありうる。

しかし、警察がこれをふまえて下流域をヘリコプターで捜索しても、手掛かりは見つからなかった。ベロンさんの家族も、限られた条件の中で独自に捜索を行っており、8月4日に来日したベロンさんの兄弟と妹は、日光の山中や大谷川沿いを、手掛かりを求めてくまなく捜索している。

【9月4日8時35分追記】記事初出時に「8月20日に来日した」と記述していましたが上記に訂正しました。

シビルさんは「救急車の音を聞くたび、ティフェヌなんじゃないのかと考えてしまう」と話す。捜索をしていたある日、ダミアンさんが川底にベロンさんの携帯電話とおぼしき白い物体を発見した。警察に伝えたうえですぐさま木の枝を使ってカギ棒を作り、その先端に防水カメラと取り付けてその物体を撮影したが、2日後に警察が水から引き上げたところ、残念ながら小さな飲み物を入れるボトルだった。

地元の人々はベロン一家に起こった悲劇に心配りを持って対応した。封筒にお金を入れ、匿名で彼らが滞在していたホテルに預けた人たちもいた。そのうちの1人は、ベロン一家を自宅に招待して滞在させた。日光の行方不明者の情報提供を呼びかけるパンフレットが置かれた場所の下に、人々は折り鶴を置いていった。

中には、時間があるときに、ベロンさんか、少なくとも彼女に関係する何かを探そうと、その地域を歩く人もいた。「お店にパンフレットを配るたびに店主たちは、自分のビジネスに与えるイメージなど考えずに、すぐさまパンフレットを店先に貼ってくれた」と、スタニスラスさんは目を細めて言う。SNSを通じて、家族への励ましのメッセージも続々ときている。しかし、中には悪意のあるメッセージや貴重な時間を無駄にすることになった虚偽の情報も含まれていたという。

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