中国を怒らせた南洋の楽園「パラオ」の苦悩 中国と台湾の間で板挟みに

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パラオは、台湾から年間1000万ドルの支援のほか、医療や教育の奨学金を受けている。

レメンゲサウ大統領は、米国との盟約が満期を迎えた後の資金支援について、中国と公式な協議はしていないとしつつも、政府内で検討を始めていると述べた。

チャイナマネーの侵攻

中国は、数十億ドル規模の資金をミクロネシアや周辺地域における貿易や投資、援助や観光につぎ込み、瞬く間に太平洋の主要経済勢力となった。

米政府報告書によると、中国の太平洋諸島フォーラム参加国に対する貿易額は2017年に82億ドルに達したが、米国は16億ドルにとどまった。中国による無利子融資も急増している。

対照的に、米国政府が行うパラオでの基盤強化は、公用車の米国旗を大型化するなど、表面的なものが多いと地元住民は指摘する。

しかし、中国の活動は大幅に鈍化した。

前出のホテル経営者バラブさんによると、中国人投資家は2017年までに約60件のホテル建設計画について99年リースを確保していたが、建設工事のほとんどが中断している。

コロールの不動産鑑定士で、中国企業と地元住民の土地リース契約を仲介するジャクソン・ヘンリー氏は、2020年の大統領選までにパラオに対する中国投資を後押しするチャンネルを築きたいと語る。

パラオは、台湾と中国の双方と友好的でありたいと考えている、と過去に駐台湾大使やパラオ政府観光局の局長を勤めた経験のあるヘンリー氏は語る。「中国人顧客は、次期政権が中国本土との関係を改善することを期待している」

(Farah Master 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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