電車が遅れる原因「ドア引き込まれ」の実態 ケガ人が多いのは夏?鉄道会社の対策進む

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ドア引き込まれトラブルの対策として、縦長のステッカーはほかの鉄道でも採用例が増えている。その一例は東京メトロだ。同社によると、2016年度以降「引き込まれないようご注意ください」との注意書きが入った黄色のステッカーを採用。銀座線車両を皮切りに、東西線、千代田線と混雑の激しい路線から順次導入した。

導入のきっかけは「腕時計が戸袋に引き込まれて文字盤がずれてしまった」「ドアに手を当てていた人が引き込まれてしまった」などといった利用者からの声が寄せられたことだ。「ステッカーを変えてみたらいいのではないかということで、大人も子どもも意識しやすい目立つサイズにした」という。

JR東日本横浜支社も2017年12月以降、南武線と横浜線の車両で縦長の注意喚起ステッカーを採用している。特に意識しているのは子どものトラブル防止で「お子さま目線でのイラストを取り入れたデザインにすることで注意を促せるようにした」といい、低い位置には同支社のキャラクターをあしらっている。同支社によると「把握しているかぎり、導入後は(ドア引き込まれトラブルは)発生していない」といい、効果を上げているようだ。

結局は混雑緩和がいちばん…

2016年に東京圏の鉄道整備についての指針を答申した国土交通省交通政策審議会「遅延対策ワーキング・グループ」の資料では、東京圏主要19路線23区間で発生した3分以上30分未満の遅れ(2013年11月の平日朝ラッシュ時20日間)の主な原因のひとつとして「ドア挟み」が挙げられている。国交省鉄道局都市鉄道政策課によると「ドア挟み」は最多の「混雑」(全体の35%)に次いで多い12%だ。ドアに関するトラブルが無視できない要素であることがわかる。

鉄道会社側にも対策が求められるとともに、利用者側でも気をつけたい電車のドアや戸袋関連のトラブル。もっとも、ラッシュ時の激しい混雑がその大きな要因であることは紛れもない事実だ。東京圏と比べれば大幅に混雑率の低い、ある地方都市の路線で車掌を経験した鉄道関係者は「駆け込み乗車には気をつけていたけど、戸袋の引き込まれはあまり気にしたことなかったですね……」。

結局のところ、最善の解決策はやはり混雑緩和ということになるのだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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