京急が「北斗の拳」コラボで突くファンの秘孔 「ザコ」列車や「かぁまたたたたーっ」で新伝説

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京急百貨店の地下食品売り場の「ひでぶ」まん(記者撮影)
発売日に完売した「駅名看板キーホルダー」(記者撮影)

これまでに京急が展開したキャンペーンをみると、グループを挙げて取り組む場合が多い。今回はそれが顕著に表れている。上大岡にある京急百貨店の地下食品売り場は、8月中「『ひでぶ』まん」(旨辛肉まん)、「『あべし』揚げ」(唐揚げ)、「『たわば』丼ぶり」(三元豚の黒豆いため)といったオリジナル商品を用意した。駅構内のコンビニを運営し、京急のオリジナルグッズを扱う京急ステーションコマースは、京急かぁまたたたたーっ駅をはじめとする3駅の「駅名看板キーホルダー」を発売するなど商売熱心だ。

駅名看板キーホルダーは8月1日に各600円(税込み)で500個ずつ販売を開始したところ、インターネット通販の「おとどけいきゅう」を含めて即日で完売した。8月28日に各600個を追加販売したが、同日中にほぼ売り切れた。

「ヒャッハー!」を支える慎重さ

一方で、企画の実施にあたっては鉄道会社らしい慎重さも欠かさない。駅名看板やポスターなどのデザインについては「子ども連れをはじめ皆さんの目に触れる場所なので、出血などの暴力的な表現は避けた」(伊藤さん)。

特別な装飾を施した車両で張り切る劇団ザコのメンバー(記者撮影)

イベント列車の運行に関しては、車内の限られた空間で動くため、事前に車両基地で実際に列車を使い、劇団ザコが「通し稽古」をして安全を確認するほどの念の入れようだ。当日も「席を動くときには吊り革につかまるよう、ザコなりの言い方で参加者に周知してもらった」(同社)という。通路にある吊り革は頭をぶつけないようにあらかじめ高いところで結ぶなど、細部にも気を配った。

一見すると大きく羽目を外したかのような「北斗京急周年のキャンペーン」。京急電鉄・広報部報道課の渡辺栄一さんは「鉄道の現場も新しいことや面白い企画を歓迎し、乗客が増えてコミュニケーションが生まれることに前向きでいる」と話す。

京急といえば、同業他社で機械化が進む中でも人の手による運行管理で、臨機応変な対応を実現していることで知られる。新しいことを受け入れやすい風土だけでなく、鉄道の安全運行に対して手を抜かないプロ意識の高さがあるからこそ実現したといえそうだ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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