ラオックス銀座閉店、脱「爆買い」戦略の成否 インバウンド消費の激変に振り回された
これまで手掛けてこなかった新しい領域にも手を広げ始めた。今年3月、中国・上海の高級ホテル「ベラージオ上海」にオープンしたのは、東京でも予約が難しい日本料理の名店「くろぎ」の中国一号店だ。平均客単価は3万円以上という高級店にもかかわらず、オープン直後から予約が殺到。日本にも劣らない人気店となった。運営するのは、ラオックスの上海子会社だ。
国内では、2017年に成田空港に近い千葉市にショッピングモールを開店。店内には劇場を設け、言葉の通じない外国人でも楽しめる「無声演劇」の公演を始めた。「中国人が今何に関心があるかは、中国資本である彼らがいちばんよく知っている。利幅は薄くても、あらゆる関心とニーズに合わせて商材を広げていこうとするのは、まさにラオックスらしい」(中村氏)。
シナジーが見えにくい買収も
百貨店を中心に展開する婦人靴メーカーも次々と買収したほか、今年3月にはニッセン傘下でギフト店「サラダ館」などを展開するシャディも傘下に入れるなど、既存のビジネスとどのように結びつくのか見えにくい業容拡大策も散見される。当然、社内も困惑する。「社員の多くが家電量販店のノウハウしか持たない中で、私の場合は突然婦人靴メーカーの代表に就任するなど、まったく新しい仕事をやることになった。始めのうちは、毎日とにかく必死だった」(山崎陽子・社長室経営企画部長)。
当然、成果がすぐに出ることはない。2018年1~6月期の売上高は、免税店事業の回復などで前年同期比約6割増の462億円となったが、ショッピングモールの先行投資に加え、買収したギフト店や婦人靴の苦戦が響き、8億円の営業赤字となった。モール内のテナントの中には、客の入りが思わしくなく早速減損損失を計上したところもある。羅社長も、「千葉のモールは、まだまだ改善の余地がある。都心から遠いのもネックだ」と認める。
現段階で、ラオックスが始めた業容転換がどのように実を結ぶのかはわからない。決断の早い羅社長ゆえに、芽の出ない事業からは早々に撤退する可能性もある。ただ、何かしら手を打たない限り縮小の一途を辿るのは目に見えている。同社にとっての「日本一の免税店」に次ぐ金脈は見つかるのか。試行錯誤はまだ始まったばかりだ。
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