《MRI環境講座》洞爺湖サミット連動特別編(2) 洞爺湖サミットの成果と現実

■中期目標については具体的な数値は明記されず

 一方、中期目標については、「野心的な中期の国別総量目標を実施する」と目標設定の必要性は明記されたものの、具体的な数値には踏み込めなかった。これは、中期目標の設定が現在の政権の政策運営にも影響を与えうるシリアスなものであることを物語っている。

 2020年という時間軸は長いようだが、温暖化政策においては必ずしもそうではない。例えば、温暖化対策はエネルギー政策や交通インフラ整備が決定的に重要となるが、この数年間のこれらの政策の内容によって、2020年の排出量のベースは決まってしまうといっても良い。従って、中期目標の設定には各国の利害が直接的に絡むため、交渉が難航するのである。

 洞爺湖サミットでは、G8首脳から長期目標の合意に向けた意志を示した点では一定の評価ができるだろう。しかし、中期目標に対する各国のスタンスの違いに表れているように、各国の利害が絡む部分では実質的な進展は見られなかった。

 以下のグラフは現在の各国の一人当たり排出量を示したものであるが、赤い線が2050年50%減とした場合に達成すべき一人当たり排出量であり、現在の途上国平均より少し多い程度で、先進国平均の1/4、日本人は1/3以下にする必要があることが分かる。しかも、2050年に50%減を達成できれば、温暖化が食い止められる訳ではなく、影響が緩和されるだけである。この現実をしっかりと受け止め、いかに今までの社会システムの延長線上で対策を進めることは不十分であり、社会システムの転換が求められているかが分かるだろう。

 次回は、社会システムの転換の一つのアプローチとして昨今注目されている排出量取引制度について取り上げてみたい。

*1 「2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させることを含む、EU、カナダ及び日本による決定を真剣に検討する」(ハイリゲンダムサミット宣言)

《プロフィール》
株式会社三菱総合研究所
環境フロンティア事業推進グループ/環境・エネルギー研究本部
環境・エネルギー研究本部は、環境・エネルギーに係わる様々な専門分野を持つ約100名の研究員により構成。その前身の地球環境研究本部は、リオ・サミットの前年である1991年の創設以来、国などにおける環境関連政策、制度設計の支援、関与など中心とし幅広い実績を持つ。
また、企業における環境問題への取組の浸透、拡大等が進む中、先進的な環境関連の事業、ビジネスを支援する機能として、環境フロンティア事業推進グループが2007年10月に設立。電話番号は、03-3277-0848

真野秀太 研究員
環境・エネルギー研究本部地球温暖化対策研究グループ
排出量取引制度や算定・報告・公表制度等の国の制度設計の業務や、京都メカニズムに基づくプロジェクト発掘・形成に携わる一方、企業への温暖化戦略のコンサルティング業務を行う。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2008年7月16日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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