《MRI環境講座》第3回 成長機会としての環境問題
環境月間である6月を過ぎ、7月7日からは、いよいよ「洞爺湖サミット」である。“エコ”に係わる企画、番組など、メディアでの環境問題の取り扱いは極めて活発化している。と同時に、世界的な原油高などの影響もあり、環境・エネルギーの問題の持つ、身近で切実な側面もクローズアップされている。
さて、前回までのMRI環境講座では、環境問題が社会システム、自然システムにまでその領域を拡げてきたこと、そして、これに伴い、企業には“ほどほどではない対応”が求められはじめていることなどを記してきた。これらを踏まえ今回は、環境問題を企業の“成長機会”と捉えたうえで、議論を展開する。なかでも金融市場、特にファンド(投資信託など)における関連する動向を紹介しつつ、環境問題と成長機会をつなぐモノについて考察していきたい。
■エコファンドから“エコ成長ファンド”へ
いきなりで恐縮だが、環境講座の読者の皆さまであれば、「エコファンド」はご存じのことと思う。中には実際にファンドを購入している方もいらっしゃるであろう。必ずしも明確な定義はないと思うが、環境問題への配慮に優れている企業、あるいは、環境関連事業の積極的な展開を図っている企業などを主対象としたファンドが、「エコファンド」だ(詳細は後述するが、エコファンドにも実は様々なコンセプト、バリエーションが存在する。ただ、ここでは部分的にでも上記要素を具備するものを、エコファンドと称して議論を進めたい。また、ある意味で似たものとして、「SRIファンド」も存在するが、ここでは、その定義やエコファンドのとの関係などには立ち入らない。機会があれば別途のご紹介としたい)。
我が国におけるメジャーなエコファンドとしては、「日興エコファンド」が有名である。その目論見書などを見ると、(中長期的な観点で)環境問題への対応が優れている企業および環境に関連する事業を行なう企業を、投資の主対象としている旨が示されている。
「日興エコファンド」の設定、運用開始は1999年であったが、それ以降、様々なエコファンドが登場している。中でも実はここ数年は、エコファンドの設定が相次いで行われている状況にある。
至近の例を挙げれば、6月27日に設定、運用を開始する「環境立国日本株オープン」が発表されたところである。このファンドは、「(主に『地球温暖化』、『リサイクル』、『生活・健康』関連技術・サービスに着目しつつ)世界的な環境問題の解決に有効な技術・サービスを有し、国際的な環境規制などの変化に対応することによって中長期的に企業価値の向上が見込まれる企業」を主体対象とするとされている(実は、三菱総研も支援を行っているのであるが・・・)。
そうした中、特に近年においては、一括りにはし難いほどの幅、バリエーションが、“エコファンド”に生まれつつあるように思う。そして、こうした幅を生んでいるのは、基本的なコンセプトの観点では(あえて二元論的に言えば)、「環境配慮」、あるいは「環境事業」のどちらに重点を置くか?にあると言える。
前者は、環境問題への対応、配慮は企業の責務であり、それを全うしている企業を評価し、投資対象としようとの発想、後者については、環境問題は企業の成長の機会、ドライバーであり、それを活かしている企業を評価しよう、という考え方がベースである。
以下に、投資信託協会のHPから、名称、コンセプトなどから、エコファンド関連(SRIに含めて)と思われるファンドを抜き出し、それらの純資産総額を積み重ねたものの推移を整理してみた。2005年の京都議定書発効、2007年におけるIPCC第4次評価報告書、アル・ゴア氏の「不都合な真実」の発表、そして本年の洞爺湖サミット。これらとタイミングを合わせるように、純資産総額がジャンプアップしているようにも見える。これは、関連株価の上昇などに加え、新たなエコファンドの設定がその要因となっている。特に近年のファンドの設定においては、既述の区分で言えば後者の捉え方に軸足をおいたエコファンド、いわば”エコ成長ファンド”の設定が活発である。金融市場においても、環境問題を企業の成長機会、要因として捉える動きが拡がっていると言えるだろう。
最近ではまた、経済産業省が「金融市場における『環境力』評価手法研究会」を設置した。6月26日に第1回研究会が開催されたばかりだ。
この会は、我が国の企業が持つ「環境力」を金融市場において評価、表現し得る手法の開発などを狙いとしたものである。ここでも環境問題を成長機会としていかに捉えるか、が重要な論点となっている。
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