想像と観念論は時間の無駄。理論よりOJTで人は育つ--金川千尋・信越化学工業社長

--塩ビと両輪である半導体ウエハ事業で生産能力を落としているという指摘もあります。半導体市況の悪化をどう捉えていますか。

よくないけれど、それほど悪くもないですよ。うちは全部需要家と3カ月から半年、あるいはそれ以上の長期契約をしています。こういう仕事には必ず浮き沈みがありますからね。そういうときは弱いところからだんだん消えていく。強いところだって痛みはありますが、弱いところが消えて無くなれば、また再びいいマーケットになりますからね。今は多少痛みがあるけれど、我慢してればいいんです。当社が消えないように努力していればいいわけです。

--ウエハ事業のライバルであるSUMCOは大幅に下方修正。ウエハはますます悪化しそうですね。

今の半導体の景況感が底ではないでしょう。今が第一震の揺れだとすれば、必ず第二震、第三震もありますよ。

社長交代は必要があればいつでもやる

--8月に取得した白河の工場用地の用途は。

あれはただ土地があったから買っただけです。土地がなければ何をやっても始まりませんからね。半導体は伸びるから、いくらでも投資しますよ。アナリストや投資家からは、なぜもっと投資をしないのかと言われているくらいです。

--今回の用地は、すべて半導体用材料に充てますか。

将来何をやってもいいために土地を購入したのです。新規の太陽電池なんかは増えていくでしょう。テーマとしては面白いと思っています。エネルギーは今後高騰していく可能性がありますから、相対価値は上がってくるでしょう。太陽電池は6~7年前から始めているが、この分野は中国などが無数にやっています。だから、他社に対する技術的優位性がなければ本格生産はやりません。

--塩ビとウエハに次ぐ第三の柱としての事業拡大は。

まずはシリコーン樹脂です。これなんかは非常に古くてかつ新需要を創出する新しい商品ですからね。エキシマレジスト(半導体の微細な回路配線を可能にする感光性樹脂)も同様です。ハイブリッドカーのモーターなどに使用されるマグネットも増設済みです。天然高分子から作られる環境配慮型素材セルロース(誘導体)も着実に需要は増えています。

現状にとどまっていてはダメ。今の収支を頭に入れたうえで新しいものは積極的にやっていきます。

--事業拡大において、M&Aも念頭に入れていますか。

M&Aはチャンスがあればいくらでもやりますよ。手元資金が3000億円ありますからね。仮に1000億円使っても2000億円余るわけですから。投資、増産、改良とかそういったところに使いたいと思っていますね。

--人材育成について、どのように考えていますか。

OJTしかないです。学校へ行って理論を学んでも何の役にも立ちません。物知りなんて役に立たないのです。実際に仕事を起こすような人でなければダメです。

人を育てるなら、一つに専念させます。一つのことができないのにほかのことができるはずがありません。たくさん失敗したほうがいいと言う人もいますが、まったくおかしな話。たくさんしくじれば会社は潰れます。

--就任されて18年、長期政権ですね。次の世代へのバトンタッチはいかがお考えですか。

明日やるかもしれませんし、必要があればいつでもやろうと考えています。ただ激しい中でやっていける人材がいるのかどうか。人間として信頼しているのと、事業を信頼してやらせるのとは別問題です。

かながわ・ちひろ
 1926年3月生まれ。50年東大法学部卒、極東物産(現・三井物産)入社、62年信越化学工業入社。70年海外事業本部長、75年取締役、76年常務、79年専務、83年代表取締役副社長、90年より現職。米国ルイジアナ州名誉州代表。

(鈴木雅幸、二階堂遼馬 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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