意外と知らない「古生物」の本当のサイズ感 なんとなく「大きい」イメージがありますが…

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本書は「古生物」というノンフィクションと、「それが現代社会に存在する」というフィクションを融合させた。それによって遠い昔に絶滅した生物たちを、これまでになかったリアリティを伴う存在として感じさせることに成功している。

そして、現代を背景にした、いないはずの古生物たちを違和感なく眺めていられるのは、本書のすばらしくリアルなイラストによるところが大きい。

さっきの魚市場の「売約済み」って…

ところで、さきほどの魚市場でのアノマロカリスのイラストだが、サバやタイなどおなじみのサカナたちに混じって、「売約済み」と書かれたこの異物感ある生物は、いったい何なのだろう?

気になりながら数ページめくったところで、いきなりその答えにぶちあたった。

(画像:技術評論社)

さ、さっきの「売約済み」……これじゃないのか?? ネクトカリス、イカに似たカンブリア紀の生物である。だが、どこにも「さっきの市場のあれがこれですよ」なんて説明はない。

よくよく見ると、あちこちのページに、なんの説明もなく、別のページに出てくる古生物がエキストラのようにさりげなく登場しているではないか! 

『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

――なにこの心地よい「ヤラレタ!」感は? これ絶対、この本をつくった人たち、めっちゃ楽しんでる!! 

作り手側が楽しんで作った本でなければ伝わってこない、わくわく感が放出されまくりの本書。「古生代編」とあるので気になって問い合わせてみたら、「中生代編」や「新生代編」も刊行予定だそう。

さて、こんどはどんな「ヤラレタ」を仕掛けてくれるのか? 続編の刊行が早くも待ち遠しい。

レトリバーと眠るディイクトドン(画像:技術評論社)
塩田 春香 HONZ

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しおた はるか

出版社営業局勤務。大学では日本美術史を専攻するも、自然や生きものへの愛情を抑えきれず、自然科学系書籍の編集に3社で合計10年間ほど携わる。好きな 作家は井上靖。好きな花はキュウリグサ。最近の関心事は、ミナミコアリクイの威嚇がすごくカワイイことと、家庭菜園を荒らすハクビシンをどうやってとっち めるか。プロフィール画像は「べつやくれい」さんによるもの。

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