医療ドラマを下支えする「医療監修」の真髄

医療監修の大きな使命は「弱者を守る」こと

そして3つ目は「希望を失わせないこと」です。メディアの人たちは、視聴率を取らなければいけませんから、とにかく楽しいほうへと引っぱられがちです。

でも、そのことによって不快な思いをしたり、過度な期待をして傷ついたり希望を失う人が出てしまっては、とんでもないドラマになってしまいます。メディアの力によって傷つけられてしまいかねない、そんな弱者を守ることが、医療監修の大切な役割だと考えています。

ドラマを通して“医師の未来”にも貢献したい

私が理想だと思う医療ドラマは、「楽しくて、ある程度正しくて、ためになる」ドラマです。楽しさというのはケラケラ笑えるfunnyとは違って、感動や感心ができるより深い意味のinterestingでなければなりません。それがある程度正しい情報で作られていて、さらに、ドラマを見終わった後に命の大切さを感じられたり、同じ病気になったときに役に立つような何かを伝えられたり、役に立つ何かを残す。そんなドラマが理想です。

制作者はできるだけ面白くしたい。一方、医療監修は正確な情報で役に立つものにしたい。この両者が戦えば戦うほど、いいドラマができると思っています。両者が真剣であればあるほど、容易には妥協しません。そしてギリギリのポイントを見つけることで、本当に面白い物語ができあがるんです。

ドラマのなかでどのようなことまで許されるかという基準は、決まったものがあるわけではなく、医師それぞれでも違います。制作者が求めるものをそのまま許してしまう人もいれば、とても厳しい人もいる。ファンタジーの線引きは医師によって異なるんです。

危機管理の観点からすると、一つの作品に対して複数の医師で医療監修するのが望ましいと思います。さらにいえば、テーマに即した専門医とメディアに詳しい医師の2人が監修にあたるのが理想的だと思います。専門医だけでは厳しい基準になり過ぎるし、メディアに詳しい医師だけでもメディア寄りになりかねません。こうした医療監修の体制作りを、メディア関係者の方々には検討していただきたいと思います。

医療ドラマは、医学界にも大きな影響を与えます。ドラマでは名優たちが素晴らしい演技で医師を演じます。「DOCTORS」では沢村一樹さんが若い医師に「成績がいいから医師になるんじゃなくて、患者さんを治したいから医師にならなきゃいけない」と伝えます。そうした場面が医者を目指す若者、受験生、その親御さんに与える影響は多大です。

素晴らしいドラマは、正しいことをしっかりと主張し、正しくないことには正しくないと言える勇気も与えてくれます。医師というのは、命を預かる重い仕事です。私は医療監修という仕事を通して、医師という仕事の未来にも貢献できればと考えています。(談)

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