地方への政府機能移転にほぼ意味がないワケ 望ましいのは国に集中する権限の一部委譲だ

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何より興味深いことは、相談者のうち20歳代以下の割合が年々増加していることだ。ふるさと回帰支援センターはもともと、団塊世代の回帰をもくろんで立ち上げられたものだが、開設15年を経て、平成世代にその運動が広がりつつある。これが人口増につながるかどうかはまだわからないが、明らかに今までにない人々の前向きな変化がここには見られる。

実際に足を運んでみると、移住相談の現場も非常になごやかで、明るいものだ。来訪者からの質問や移住相談に対応する職員たちが、自分たちの地域を誇りに思って紹介できる雰囲気が醸成されており、以前であればポジティブなものと考えられていなかった地方移住が、国民の選択肢の1つとして明確に認識されつつあることが見て取れる。

しかし、この地方移住をめぐって奇妙に思える動きがある。政府関係機関の移転事業だ。

東京の一極集中は阻止できるのか

政府自身の地方移転は早い時期から話が出ていたようだが、本格化したのは2016年3月の「政府関係機関移転基本方針」が出たあたりからだ。この時点でどの程度本気で政府が機能移転を考えていたのかはわからないが、ともかく実際に起きたことは、地方移転可能な政府関係機関の一覧が作成されて、地方自治体にその誘致案を公募するというものだった。ある意味で政府の一部機関の投げ売りとも見えるような状況を呈したのである。

さらにその先行的試みとして文化庁、消費者庁および統計局が具体的に挙げられ、移転を実施していくことが検討されたが、こうした機関の移転ではたして東京一極集中の阻止はできるのだろうか。

拙著『「都市の正義」が地方を壊す』でも述べているが、東京一極集中とは権力の国家一極集中がもたらしたものである。政府に集中する権力の分散化なしには、東京一極集中はなくならない。その一部を切り離して地方においても、その機関は東京にない格下の機関となるだけであり、こうした切り捨てがまさに東京一極集中という価値を再生産していくことにほかならない。

実際、地方に移転した機関は結局、東京へ頻繁に出向かねばならず、東京にもオフィスを残しての移転となる。消費者庁移転も、「消費者行政新未来創造オフィス」(約40人)を徳島県庁に置いたものの、その全面移転は当面見送られた。また統計局も、国会対応の必要性などから和歌山県に「統計データ利活用センター」(約10人)を移したにとどまり、文化庁のみが2019年を目標にした全面移転を計画しているという。

この3庁の中では、文化庁の京都移転はまだ、新しい何かをもたらす可能性があるのかもしれない。京都は東京以前のこの国の都(みやこ)であり、現在でも文化・思想の中心地だからだ。

これに対し、消費者が最も多い東京から消費者庁を移しても、国民にとってのメリットはどうか。結局は新参で、成長途上の庁を見せしめのように追放したとしか映らない。だが実は、産業界ばかりが優先される日本の実情の中で、最も東京一極集中や人口減少に抵抗しうる政策を出せるのは、この消費者庁なのかもしれないのだ。

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