あえて「説明しすぎないCM」が好感を呼ぶ理由 ダイハツとキリンのCMがしっかり支持された
「肩ひじ張らない」「自然体」といった世界観は総合18位のキリンビール「淡麗グリーンラベル」のCMも共通だ。同ブランドでは5月より多部未華子、SEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseを起用したシリーズを展開。
多部が不思議なジュークボックスの選曲ボタンを押すと突然Fukaseが現れ、バンドの楽曲をアコースティックバージョンで弾き語る特別感のある内容となっている。CM好感度はシリーズが始まってから順調に推移しており、上位30作品の中で最も少ない27回という放送回数にもかかわらず、2015年6月前期以来のトップ20入りとなった。
「雨」をテーマに「RAIN」を歌った前作に続き、今回は七夕の日に「星」をテーマとしたCMを開始。多部が澄みわたる星空の下でFukaseの歌う「スターライトパレード」に耳を傾けながら商品を味わい、変顔をしたり大笑いしたり“素”の表情で「いいオフ、いい自分。」というコピーを体現した。
CM好感要因の「音楽・サウンド」で3216作品中3位となったほか、「心がなごむ」「映像・画像」「かわいらしい」の項目でもトップ10入り。モニターの感想も「歌と映像が合っていて印象に残る」「私もあの場所で飲みたい」「別の世界にいった感じがしました」「きれいな声だなと聞き入った」といった回答が並ぶ。
初回の60秒CM以外でもすべて30秒CMでゆったりと展開され、その中で商品特徴に触れるのは「糖質70%オフ」という画面上のコピーのみ。さわやかで美しいロケーションとFukaseの優しい歌声で作り上げられた、豪華ではないけれど豊かでぜいたくな空間がブランドの哲学を感じさせる。
人間の心を動かすCM作りのヒントとは
“情報を詰め込みすぎないこと”はCMにおける鉄則であるが、ミラ トコットも淡麗グリーンラベルも同じカテゴリの商品と比べて明らかに製品自体の情報量は少ない。
商品の特長をあれもこれもと伝えたくなるのが広告の宿命だが、受け手の感受性を信頼し、説明だけではなく感性に訴えるCMが視聴者との深いコミュニケーションを実現していたりするものだ。
商品やサービスにより得られるポジティブな感情を指す、「情緒的価値」の重要性が改めて叫ばれている。
ほかと差別化するために難しい製品情報を並べた“インフォメーション”ではなく、その商品がもたらす豊かな生活や感情のちょっとしたプラスの変化を表現し、共感してもらえたブランドが応援される。ここに女性ターゲットに限らず、人間の心を動かすCM作りのヒントがあるはずだ。
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