バイキング料理が60年前日本で誕生した理由

食べログでバイキング料理の「今」を分析

その犬丸社長がバイキング発明のきっかけとなる出来事を経験したのは、海外で食べた「スモーガスボード」が気に入り、それを研究するよう、1958年に当時五つ星のホテル・リッツ・パリで研修中だった村上信夫氏(後の11代目料理長)に命じた(『フランス料理二大巨匠物語―小野正吉と村上信夫』)。

スモーガスボードとは、スウェーデン語「スモーガス(バター付きパン)」と「ボード(テーブル)」をあわせた言葉だが、転じて、さまざまなメニューを食べ放題形式で楽しむスカンジナビア料理のことだ。

北欧料理を日本向けに再発明

スモーガスボードは筆者もスウェーデンのストックホルムで食する機会があったが、まったく別物でバイキングとは違う料理だと感じた。メインの料理が塩や酢漬けの魚類にハムやソーセージ類で冷たく、それ以外には温かいよりはぬるい料理が少しだけあったことを痛烈に覚えている。

料理内容が日本人にはあわないと思った。また、ドイツでホームステイした際、「今日はスモーガスボードよ」と、すべて冷たいハムやソーセージだけの料理を食べたこともあった。

飲食サービス業がグローバルに展開する際には、大きく分けて2通りの展開方法が考えられる。1つは、「いまあるものを何も変えずにそのまま輸出、輸入する」方法だ。たとえば、アメリカで純粋な和食店をオープンするなどだ。

そしてもう1つは、「現地のスタイルにあわせサービスや商品を変化させる」方法だ。たとえばタイに進出する際に、トムヤムクン・ラーメンを開発することである。

帝国ホテルのバイキングは、以上の2つの方法をうまく融合させた例といえるだろう。スモーガスボードのアイデアを参考に、ローカライズをおこない、日本で「バイキング」という食事形態を創作したのだ。

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