また中国で発生した「不正ワクチン事件」の闇 35万人の子供が接種、親たちに広がる不安
しかもそれだけではなかった。過去に、長春長生が製造し、出荷した子どもの予防接種用のワクチンが、品質基準を満たしていなかったという「前科」が明らかになった。
当局から指摘を受けたのは昨年10月。基準を満たしていなかった製品とは、ジフテリア、百日咳、破傷風の3種混合ワクチンである。当時の監督当局の調査では、長春長生ともう1社、武漢生物科技有限会社が製造した同ワクチンが品質基準を満たしていないにもかかわらず、合わせて65万本が出荷されてしまっていた実態が明らかになった。
中国メディアが報じた、山東省の衛生当局の発表によれば、省内に長春長生の問題のワクチンは、25万本以上流入していた。しかも、すでに21万人以上の子どもにそのワクチンが打たれていたという。
一方、武漢生物科技が出荷した40万本のうち、21万本が河北省、19万本が重慶市に販売された。それを打った子どもは、河北省では14万人以上。分かっただけでも、合わせて35万人の子どもたちに、品質基準を満たしていないワクチンが使われていたのだ。
不信感を募らせる親たち
問題のワクチンは人体に影響を与えないのだろうか。中国メディアは、免疫効果がなくなる可能性はあるものの、健康には悪影響を与えないとする専門家の見解を報じている。
長春長生製のワクチンを子どもに打ったという母親が、中国のテレビ局の取材に応じている。広東省に住むその女性は、今年2月、生後3カ月の女の子に、3種混合ワクチンの接種を受けさせた。
娘はその10数日後、激しく咳き込み、喘息状態になったという。携帯電話で撮影した映像では、乳幼児が泣き声のような咳を続けていた。病院に連れて行くと、百日咳と診断され、集中治療室に入れられたという。打ったワクチンは同社のものではあったが、問題の出荷分ではなかった。
ただ、この女性は、「ワクチンに効力がなく、免疫の保護能力がなかったので、かえって百日咳にかかってしまったのだと思う」と話している。問題の企業やワクチンそのものに、大きな不信感を募らせているのがよく分かる。
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